平田玉蘊 梅林山水図 菅茶山 賛 紙本 横28.0㎝×縦131㎝
平田玉蘊の「梅林山水図」である。小川のほとりの民家と周囲に一面に咲く梅が描かれる。春ののどかな景色である。
作品には漢詩人として有名であった菅茶山が賛をしている。
漢詩は、次のように詠まれている。茶山の詩集『黄葉夕陽村舎詩』にも収録されている。
玉笛空吹塞上悲
音書漫寄隴頭思
幸吾歳々在郷国
賞遍開時将落時
前半の二句は分かりにくいが、後半の二句では、「私は幸いなことに毎年故郷(福山・神辺)に住んでいるので、梅の花の開く時も散る時も遍く鑑賞するこどできる。」と解釈できる。
茶山の詩が先にあり、その詩に合うように平田玉蘊が風景を描いたのではないか、と考えられる。
『黄葉夕陽村舎詩』が完成しのが文政6年(1823年)であり、玉蘊37歳頃の作品と思われる。
絵をよく見ると、石垣の上のせり出した場所に、甕が置かれ梅の花が一枝挿されている。
人物が描かれていないことが、かえってこの住まいの住人の奥ゆかしさを象徴させているかのようである。