円山応挙(2) 「鶴亀図」 (光祖 賛) 紙本
横27.5㎝×縦104㎝
応挙の「鶴亀図」である。円山派の総帥として、江戸期京都画壇に革新的絵画を創造した応挙だけあり、淡彩の小品でも深い味わいがある。
絵では、歩んでいる一匹の亀を鶴が振り返り興味深かそうに眺めている図である。この絵の上部には公家とおもわれる光祖によって、和歌が詠まれている。
「契れ猶、栄うる宿と、鶴の千代、亀の万代、かけて尽せじ」
この絵は繁盛している旅館からの依頼であったのだろうか。即興的に応挙は鶴と亀の絵を描き、同席していた公家光祖は、鶴と亀の長寿に事寄せこの宿が永遠に栄えるように、という歌を詠んだと想像される。
鶴に亀の絵は多くの江戸の画家が描くが、応挙は決してマンネリになっていない所がすばらしい。
鶴は亀を心配し、穏やかな表情で温かく見つめる慈母のようである。
亀は絵の下に小さく添えられているように描かれているが、よく亀の表情を見てみると、負けん気の強そうな、精悍な亀である。なにげない生き物である鶴や亀に、生きる
魂を注ぎ込むことが、円山応挙の天才的な才能であろう。
平田玉蘊も多くの円山応挙の作品を見て刺激を受け、自分の作画のエネルギーにしていたと想像できる。