これって名誉棄損?あるいは、侮辱? | 福岡 弁護士 | 奥田貫介の法律ブログ
〈共通する点〉
 名誉毀損と侮辱はどちらも、不特定又は多数の人が知り得る状態(=公然)であることが前提となっているということがわかります。よって、ただ単に友人同士の会話で誰かの悪評を述べたり、侮辱したりしても、基本的に名誉毀損罪や侮辱罪は成立しません。
 もっとも、近時では、ネット上(ブログや掲示板等)に他人の批判や悪口を書き込む、ということが考えられますね。ネット上の情報というのは基本的に誰でも閲覧できるものであるため、ネット上の書き込みは「公然」のものであると理解されることが多いといえます。

〈異なる点〉
 他方で、名誉毀損と侮辱の大きな違いは、「具体的事実の摘示」があった場合かそうでないか、ということになります。少しわかりにくいのですが、上記の例で言うと「隠し子がいる」「前科がある」というのは、それが真実であれ嘘の情報であれ一定の具体的事実関係に言及していることになります。しかし、「バカだ」というのは発言者の主観的評価であって、抽象的な表現にすぎません。この点が、名誉毀損罪と侮辱罪とを区別しています。

〈被害にあったら・・・〉
1. 刑事上の責任追及
 上記の二つの罪はどちらも親告罪といって、被害者がこれを警察ないし検察に“告訴”することによって初めて事件として扱われる犯罪です。そこで、相手の刑法上の責任を追求しようとする場合は、告訴をしなければなりません。ですが、比較的軽微な犯罪であるために不起訴となる場合が多く、あまり現実的な手段ではありません。
2. 民事上の責任追及
 そこで、通常は民事上の責任追及をしていくこととなります。名誉毀損罪も侮辱罪も、人の名誉に対する侵害行為が生じているため、不法行為(民法709条)があったものとして、損害賠償を請求することが可能です。

 いずれにせよ、自分についての“社会的評価を低下させる事実”や“他者からの軽蔑の価値判断”が出回っていることを知った場合は、泣き寝入りをするのではなく立ち向かうことが可能であることを、ぜひ覚えておいて下さい。