タッチ⑧あだち勉とあだち充物語(後編) | 本の匠 ビンテージコミック探検隊

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ビンテージコミック(ヴィンテージコミック)とは昭和30年~の新書刊マンガのことです 
このブログは、そんな昭和のお宝マンガ、絶版マンガ、封印作品など探求していきます





あだち充は少年漫画から少女漫画へ
身を投じる事になる


それに対して勉は




実録あだち充物語 (少年ビッグコミックス)



当時は少女漫画に対して偏見が
あったのは事実である



(これに関しては出版社にも
問題があって、原稿料の安さや
少女漫画家は使い捨てみたいな
扱いを受けていた。)



(これ、逆にシュールで素敵かも?
気になってタイトルを調べてみたら…
「イカス奴」(笑)もちろん絶版
いつかブログで特集してみたいが
ネットでもほとんど情報なし…)




(足が3本?)



(足が長すぎーーー)


(手がデカすぎ)


(顔でかっ)



(目デカっ!)




ここで「○デカっ」が来ると
思った人ひっかかりましたね(笑)





当時、少女漫画は
「女の子が主人公じゃないとダメ」
「SFなんて女性は読まないから描いては
ダメ」「とにかく恋愛物か、お涙頂戴物」

を描けとか出版社から色んな制約
を受けていた




しかし
1970年代には、少女漫画の革新を担った
日本の女性漫画家たちが登場

萩尾望都竹宮惠子大島弓子
らに代表される「花の24年組」
少女漫画界に革命をおこした


(このまま渡したらボツになるだろうと
締切ギリギリに男性が主人公の
作品を出したり「これは少女」ですと
言いはったり、出版社もしょうがなく
載せたら大ヒット作品が生まれた)



熱いぞ!熱すぎるぞ!
花の24年組



それまでデッサンもメチャクチャ
目には星、バックは花畑だった
少女漫画を変革していった


コマ割や効果線などのテクニック
も斬新で革命的だった



この作品は、少女漫画なのに少女が
登場しない!それまでタブーとされた
少年愛をテーマにした革命的な作品




(ここで問題です。上の作品は誰の何という
作品でしょうか?)




これらの作品に影響を受けた充は…



どんどん少女漫画のテクニックを吸収して

少年誌に、逆輸入することになる




なんと!これが人気ダントツ




『少年ビッグコミック』で連載が始まる


ああ!この新連載こそが





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少年漫画に、ラブコメを持ち込んだ
記念的作品「みゆき」である






主人公の愛の告白が
「みゆきが好きなんだもん
別れたくないもん」

って、あまりにも情けない…


でも、最後の最後に本音を告げる
このシーンがカッコ悪くて情けない
のに泣ける


(心で思っても、男だったらカッコ
悪くて口に出せないセリフである)


こんな主人公って今までいなかった

(実は、自分も「みゆき」のラストで
不覚にも涙がでてしまったのだが
今まで内緒にしてました)






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売れっ子になり、忙しくなってきた先生


赤塚不二夫のチーフアシスタントを
していたは、赤塚の元をさり


充のマネージャーとして
かげから支える事を選ぶ



赤塚先生から「アシスタント」を
辞めるなら、もう一度自分で漫画を
描くようにすすめられたのだが…

(その才能を捨てるのは勿体ないと
赤塚は惜しんだのだ)


もう、自分で漫画を描くことはなかった






そんな勉が…
ただ1回だけ、最後に描くことになる


赤塚不二夫をほっとけなかったからだ


赤塚先生、私生活はどうしようもない人で
浮気をくり返し、いつも行くラブホテルはツケ
そしてそのツケの支払いには奥さんが行く

二回目の結婚は、この奥さんが2人の
結婚を後押ししたことでも有名

結婚会見では赤塚の前夫人も同席するという
異例の会見だった

(いくら「ほっとけないと言っても」
と思うけど…(笑))







晩年、赤塚先生はアル中で漫画を
描けなくなってきたのだが
最後に「ビッグゴールド」で
赤塚先生の作品をのせようと
いう企画でかつてのアシスタント
たちに声をかけた


当時のアシスタントたちは、それぞれ
大御所の先生になっていたり
マンガ家を辞めていた人もいたのだが…

(ルーズな金銭問題で、怒って
出て行った人もいたし…)





アシスタントがそろったのだ。
チーフは、あだち勉
以下、高井、古谷、北見、土田よしこ。
名古屋から、とりいもかけつけた




(このメンバーもすごいけど、この中で
チーフをつとめる勉さんもすごいですね)





赤塚先生の絵はゆがんでしまっていた
皆は、それが切なかった


赤塚の線はゆがんでいたが、勉はコッソリ
先生の下書きを全部、描きなおして
最後の作品が完成した





それが「シェー教の崩壊」である






これが赤塚先生最後の作品となった




余談になるが
赤塚先生らしいエピソードで…

「原稿をタクシーに置き忘れて、
なくしてしまいました!」

と編集者が真っ青な顔で戻ってきた

赤塚不二夫の原稿をなくしてしまった
編集者。翌日には原稿を印刷所
に渡さなければ雑誌に穴をあけてしまう

大変な状況にもかかわらず、
赤塚不二夫はまったくあわてることなく
「ネームがあるからまた描ける」と言い、
((注)ネームとは…映画で言う台本みたい
なもの)


さらに言った言葉が

「まだ少し時間がある。呑みに行こう」
(これは編集者を安心させるために言った
と思うのですが、赤塚先生ホントに編集者と
飲みに行ったそうです)


また数時間かけて同じ話を描きあげて
「2度目だから、もっとうまく描けたよ」
と言い、その原稿を編集者へ渡したそうです
(怒られると思っていた編集者は号泣!)

この一言の心配りが赤塚先生の魅力かも?







そして、あだち勉も師匠ゆずりの
「飲む、打つ、買う」の人生をあゆみ


56歳の若さで胃がんでひっそりと、
この世を去った



「他人に気を遣う人で、入院するときも
『充は忙しいんだから、来なくていいと言え』
と話してました」(幸子夫人)


赤塚不二夫とあだち充という二人の
天才の裏方を全うしたのが勉だった







『タッチ』における賢弟愚兄の設定は
あだち兄弟の関係だったような気がする






赤塚は、ほっておけなかったけど
弟の充は、ほって先に亡くなってしまった


「タッチ」のセリフでこう言うのがあった




「一生懸命な弟だから、ほっておけるんだよ」
「才能と努力。無敵の弟だよ」

これは兄 あだち勉の弟 に対する
言葉だったような気がしてならない



あだち勉があだち充の事を描いた
「実録 あだち充物語」




実録あだち充物語 (少年ビッグコミックス)


これに対して、あだち充が勉の事を
描いたのが「タッチ」だったのかも
しれない




タッチ 全26巻完結(少年サンデーコミックス) [マーケットプレイス コミックセット]






長い間「タッチ」にお付き合い
ありがとうございました


次回からは新シリーズに挑戦します
とりあえず取材にあの「映画」
行ってきます




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