(第5話)
「進路」。
たったの18年も生きていない時分で、
「一生の方向性」を『受験』『志望校』の名のもとに決断をしなければならない。
「好きなこと、得意なことを将来の仕事にすればいいのだよ」
とは言われる。そう、浩太もそう言われた。
音楽の道を突き進もうか、という希望も確かにあった。しかし、これが「大人になる」ということに通じるのか、「理想と現実」というジレンマに直面する。
「本当のところ、俺は何がしたいのだろう」
それが分からぬままセンター試験を迎えた。結果は惨憺たるもので、自己採点の結果をそのまま信じたら、合格できる公立大学などあるはずもなかった。
半ば泣きべそをかきながら職員室に行った浩太を、布川先生は穏やかに迎えてくれた。
「浩太、そこに座って」
「はい」
力なく、椅子に腰かける。
「・・・・自己採点の結果は結果として。もう、終わったことだからな」
「・・・・はい」
「さて、どうする浩太。そのままY大農学部を受けるか?」
「・・・・そうですね、今更志望校を変えても意味ないっす」
「・・・・二次試験は、小論文だけだったね」
「はい。小論文はむしろ得意なんで、試験官にがっちりアピールして、逆転しますよ」
「おう、その意気だ」
布川先生は満足そうに頷いた。
「ちょっと、歩くか」
「?はい、いいっすけど」
布川先生は、俺ら音楽部の連中のたまり場になっていたEveに俺を連れて行った。
先生と一緒にいる俺を見てマスターが驚いて
「浩太くん、樋口くんたちは?」
なんて声をかける。すると
「いつも私の生徒の浩太がお世話になっています。担任の布川です」
と、先生が深々と頭を下げた。マスターも慌てて頭をさげ、
「おーい、浩太くんの先生が」
と、奥で調理をしていたママを呼ぶ始末。ちょっと浩太は、カッコ悪かった。