(第9話)

 

その二日前。

「・・・・すまんが、俺は金は出さんぞ」

今日と同じように座布団と畳の上に額をこすりつけている浩太へ、父は冷徹な言葉をぶつけた。

 

「・・・・お前の高校3年間を見てきたけど、果たしてお前が大学に本当に行きたいとは、どうしても俺には思えん」

「・・・・・」

 

「将来については、どう考えているんだ?」

「・・・・・仕事は具体的にはイメージないけど、でも今の時代、まず大学を出ないことには・・・」

 

「ふん、そうは思わん」

中卒で上京し、大工の見習いやクルマの営業マン等を経て48歳で庭師として独立した父は、ずっと「学歴のカベ」に人生の行く手を阻まれてきた。それでも歯を食いしばり人生を切り開いてきたという自負があり、「とりあえず大学に」というような浩太の言動がどうしても許せない。

 

「・・・少なくても、大学受験をしようって意欲があれば、もっと勉強時間が要るんじゃなかったのか?別にヴァイオリンでメシ食っていくってことでもないだろうに、四六時中イヤホンで音楽聴いたり、なんとかチューブで動画みたり。ったく、単語帳ひとつ、見ている様子なかったじゃねえか」

 

「・・・今は、スマホのアプリでも勉強できるの」

力なく反論はしたものの、父の

「ヴァイオリンでメシ~」

のフレーズがやけにひっかかる。

 

「・・・・親父の庭師の仕事は、面白そうだって思っている。だから、来年も農学部の園芸学科を受験するから、1年だけ、浪人したい」

 

「農学部を出た庭師なんざ、聞いたこと、ねえなあ」

もしお前が本気なら、師匠に頼んで京都の老舗造園会社で3年くらいみっちり弟子入りして、そのうえで後を継げばいい、というのは父から何度か聞いていた。

 

(またそれを持ち出されるのか・・・?)

浩太は、ない頭をひねった。