(第10話)
大学にはどうしても、行かなければならない。
それは、サークルの「大学オケ」に入りたいから。
それが本心だったが、言えるわけがない。
「進学したい」=「4年間、遊べて学歴がつく」ということだからだ。
「・・・予備校に行きたければ、そのための金は自分で工面するんだな。少なくても俺から見たら、お前はまだ本気でない」。
?どうしろっていうのさ?
浩太はそれから何時間も考えた。予備校の入学金と授業料の支払い期限は迫っている。父は職人気質、いったんああなったら、てこでも動かないことは浩太がいちばん良く知っている。
「・・・たく、頑固なんだからなあ~」
風呂の中で、独り言を言った。
と、そこへ
「・・・ちょっと。浩太」
と姉の美樹が声をかける。なんだよ、風呂にまでおしかけて!いちおう、お年頃なんですけど(苦笑)。
「なんだよ、開けんなよ」
「誰が見るかよ、弟のハダカなんて」
「だから、なんだよ!風呂くらい、ゆっくり入らせろよな」
「あのさ、これから律ちゃんの家に行かなきゃないわけ」
「律ちゃん?なんでまた」
(律ちゃんとは、母の実家の従姉妹)
「ま、ちょっとワケアリでさ。で、あんた、いま困っているでしょ」
「・・・・うん、まあ」
「昇市おじさんだったら、話が分かるからさ、きっと浩太の力になってくれそうかなって」
「昇市おじさん?ええ~まさか」
「うん。ああ見えて、浩太のこと、ずっと可愛がってくれてたじゃない。いつだったかな、『浩太は大学に行くのかな』って気にしてたよ。自分が大学に行けなかったから、もし浩太が進学するなら、何か力になれればって、そんなこと前に言ってたし」
(昇市おじさんが・・・・まさか)
「で、さっき、律ちゃんに聞いたわけ。そうしたら、珍しくお酒飲まないで、今なら家にいるって。ちょっとこれから、様子見てくるから。もしかしたら、もしかするわよ。じゃあね!」
美樹はあっさり言うと、家を出ていったようだ。車が出ていく音が、風呂場にまで聞こえてきた。