(第2話)

 

Y大農学部の合格者名簿の中に、浩太の名前はなかった。

 

大学入試センター試験。

尾川中央高校から現役で国立大学に合格するのは10名にも満たない。

 

高校1年生の時に出会ったヴァイオリンの魅力・オーケストラの魔力に捉えられ、成績上位で合格したにもかかわらず、浩太の成績は見るも無残な下降線をたどっていった。2年の3学期、1学年270名中、258位の成績となった時には、さすがに母親に泣かれて、コトの重大さに気づいたのだった。

 

センター試験より7か月前。

シベリウスの交響詩「フィンランディア」と、モーツアルトの交響曲第29番をメインとした定期演奏会は、6月26日に終わった。626は、モーツアルトのKV番号(作品)番号にすると、遺作となった「レクイエム」と一致するので、

「6・26で、俺の高校オケの生活は終わる」

と気持ちを盛り上げていたのだった。

 

高井先生の素晴らしい指揮と、団員皆の一致により、最後の定期演奏会は大成功のうちに終わった。

 

最初はギクシャクしていた高井先生と浩太との関係は劇的に改善され、

「君さえ望むなら、篠崎に紹介してやってもいい。どうだね、プロのヴァイオリニストとして考えてみないかい?」

とまで言ってもらえるようになった。

(篠崎、とは、高井先生の音大の同期で、プロオーケストラの著名なコンサート・マスターである)

 

音大に進んだ斉藤先輩、そしてプロオケ団員の麻生さんからも、

「浩太、お前なら充分、やれる。どうだ、音大考えてみろ」

と何度も誘われていた。