第1楽章

 

(第1話)

合格者の名前を知らせる掲示板の前には、文字通り黒山の人だかりだった。既に結果を確認してか、掲示板から離れる人の群れは、明と暗をはっきりと区別するのが誰の目にも分かる。

はしゃぐ娘と、笑顔満面の母親。

こちらはグループだろうか、気のあう3人の仲間が、おそらく揃って合格したのだろう、

「じゃ、パーっとカラオケ、行っちゃう?」

「いいねえ~行こう行こう!」

と盛り上がっている。

 

その一方で、伏し目がちに歩く学生は一様に一人だ。いや、付き添いと思われる親が少し距離を置いて子供の後を歩いている。サクラは咲かずに散ってしまったらしい。

 

グリーンの公衆電話の前には、長蛇の列が続いていた。

 

「バンザーイ、バンザーイ」

先輩の大学生と思われる一団が、合格者を讃える。別のグループが、

「胴上げサービス、今なら無料です~!」

と口々に合格学生に声をかける。

他にも、すぐにそれと分かるコスチュームで、4月からの新入生への勧誘に、それぞれのサークルが趣向を凝らしている。アメリカン・フットボール、フェンシング、チア・リーディング、落語研究会。軽快な金管五重奏が、さらに場を盛り上げていた。

 

金管アンサンブルの響きを聴きながら、

(さすが、大学生は上手いや)

浩太は見るともなしに、そう思った。トロンボーンの音を聴くのは、「フィンランディア」の冒頭の練習を繰り返し振って以来だ。聴こえるハーモニーとは裏腹に、あの重苦しいトロンボーンの響きが浩太の心を埋め尽くしていた。