「TVCMを読み・説く」。第25回は中央酪農会議「牛乳に相談だ。」 です。


「ぎゅ~にゅうに相談だ」と耳に残るフレーズ。
こんなくだけたCMを展開するのは、社団法人中央酪農会議という堅い名前の団体。


中高生の牛乳離れをとめるため、昨年7月から「牛乳に相談だ。」というキャンペーンの一環でCMが始まりました。

CMでは牛乳の効能を、たとえを使って伝えています。

このたとえが単純でわかりやすい。


たとえばこんな感じ・・・

・牛乳を飲むとシンクロの選手のようにナイスバディになれる

milk_nice

・牛乳を飲むとライオンに勝てるくらい強くなれる

milk_strong

そして最後は決めポーズのエビぞり。


milk_ebi milk_ebi2

「牛乳に相談だ。」

このキャンペーン、CMも良くできているのですが、全体的に

クロスメディアマーケティングのお手本のようなやり方をしています。


それは、中高生にのみにターゲットを絞ることで、

 中高生がテレビを見そうな時間帯にCMを大量にしたり、

 見そうな雑誌に広告をしっかり掲載していたり、

 行きそうな場所にポスターが貼られているんです。


  ↓ たとえば・・・


平日であったら朝の準備の時間帯・夕方帰宅後、年末年始は夕方~深夜の時間帯を中心にCMを流す
中学高校の多い駅、自宅在籍率の多い駅にポスターを貼る

なんて具合に。

また、Webサイト には部活、恋愛、勉強などのテーマの掲示板、4コマ漫画、ゲームがあります。

これまた中高生が好きそうな感じのWebサイトです。


詳細は「牛乳消費拡大事業レポート」 をみてもらうと分かりますが、とにかくしつこいぐらいターゲットを追いかけてキャンペーンを展開しています。

こうやってターゲットとのコンタクトポイント(※)を徹底して追求した結果、ターゲットである中高生の86%(東京)にこのキャンペーンは届き、50%以上が牛乳を飲みたいと感じ、24%が牛乳を以前よりも飲むようになったそうです。


牛乳という一見地味な飲み物ですが、これだけしっかりと宣伝されると、効果バツグンですね。



※コンタクトポイント:顧客やステークスホルダーとブランドの接点。タッチポイントともの賞する。
(スコット M. デイビス, マイケル・ダン ブランド価値を高める コンタクト・ポイント戦略

「TVCMを読み・説く」。第24回は「レッドブル(Red Bull) 」です。

今回はこのブログにコメントしてくれましたYOHさんからのリクエストで「レッドブル」のCMを読み説きます。

レッドブルは2006年4月から流通をセブンイレブンに絞って 発売されました。


redbull

価格は275円。炭酸飲料としては高い価格設定。


私が初めてレッドブルを見かけたのは食べ物を題材とした展示会「FOODEX JAPAN(2006年3月)」でした。

そこで試飲したのですが、リポビタンDに近い味。

あまり美味しいとは言えなかったと記憶しています。

実はこのレッドブル。界ではかなりメジャーなんです。
レッドブルは「エナジードリンク」というカテゴリーで発売されています。

健康ドリンクがかなりの種類販売されている日本でこそ、

「エナジードリンク? ああ、リポビタンDみたいなやつね」

って感覚でイメージがつきますが、日本以外ではこういうカテゴリーの飲み物はあまりないんだそうです。


そんな(世界的には)独自のカテゴリーでレッドブルは、全世界において年間25億本えっビックリマーク以上を販売されている飲料なんです。


『ブランド・ハイジャック』によるとレッドブルは元々、TVCMのようなマス広告には力を入れず「いわゆる「ビロウ・ザ・ライン(※」戦術を採った」そうです。


具体的には

数々の黒い噂

 (缶入りの麻薬、合法ドラッグのたぐいか、処方箋のいらないバイアグラなのか、タウリンは牛の睾丸から摘出されたものかなど)

・積極的なスポーツのスポンサー活動

 (F1のレッドブルレーシング、サッカーのザルツブルク(豪州、ブンデスリーガ)など)

など口コミ効果をうまく活用して世界中で有名になった商品です。


そんなレッドブルのCMは4種類。

全てのCMで「翼を授ける~」ってフレーズが出てきます。


これはレッドブルのグローバルキャッチフレーズ「Gives you wings.」の直訳で、1988年以降世界中の電波媒体で流されているCMと同様なもの。

意味はレッドブルを飲むと翼が生えたように「元気になれる」ってこと(マンマですねニコニコ)です。

redbull2


ただ、CMではレッドブルがどのような飲み物であるかを直接語ってはいません。

というのもこのCMは、口コミでレッドブルが有名になったことを前提に作られているCMなんです。

だから初めてレッドブルの存在を知る日本の私たちには何のことだかさっぱり分からない。


さらに、20年ぐらい前からやっているキャンペーンの手法をそのまま今も使っているため、現在では違和感さえ感じます。


YOHさんは意味が分からないって言ってましたが、確かにいろいろなWebサイトを見てもみんなそんな意見のようです。


まあ、逆にこの意味の分からないCMを流すことで、消費者に気になる飲み物として記憶させる役割も多少はあると考えられます。
ね、YOHさんべーっだ!


※ビロウ・ザ・ライン:below the line。一般的にSPやPR、ゲリラ・マーケティング的な広告戦術を指す。
(アレックス・ウィッパーファース, 酒井 泰介 ブランド・ハイジャック~マーケティングしないマーケティング

前回 、NTT DoCoMoのキッズケータイを題材にしましたが、まさにその日(1/10)auからもジュニアケータイ の発表がありました。
やっぱり今の時期は各社新しいユーザー層の獲得をねらっているんですね。


さて、「TVCMを読み・説く」。

ソフトバンク、NTT DoCoMoの順に題材にしてきましたので、締めくくりはau。


第23回はKDDI au「電波」篇 です。


au



auはNMP(番号ポータビリティ)後、11月auだけがシェアを伸ばしました。

現在では28% と、もうすぐ30%も視野に入っています。

以前のauは若者にターゲットをあて、新しい機能を先駆けて提供してきました。

しかし最近ではケータイで出来ることって各社そんなに違いが無いと思いませんか?
だけどauだけが今回シェアを伸ばしました。
では何が良かったのでしょうか?


J.D.パワー アジア・パシフィックが2006年11月、auが日本全地域において顧客満足度(※)第一位 になったと調査結果を発表しました。

その後、auのほとんどのCMでは「おかげさまでお客様満足度全国No.1」と言っています。

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私自身も今まで携帯電話会社をNTT DoCoMo→ソフトバンク→auの順で変えました。

現在はauユーザーです。

何が決め手だったかというと「当たり前のサービスを当たり前に提供しているところ」です。

それは「電波」。ケータイは電波が入らないとほとんどの機能がムダです。


私は2年前に茨城県の守谷市に引っ越してきました。

困ったのが電波。家の中だとau以外は電波が入らない。

なので、メールアドレスも変わるし、当時は電話番号も変わるけど、ケータイの利便性を考えてauにしました。

CM「電波篇」 でも主張しているようにauはとにかく電波が入ります。
MNPが始まったことで、私のような電波の状況が悪かったユーザーがauに移ったのだと想像できます。

したがって、このCMはすごくauの強みを引き出していると思います。


audempa



しかし、MNPでの移行も一段落。

次は何でシェアが動くのでしょうか。
ケータイ市場の差別化って、ますます難しくなってきています。


※顧客満足:顧客が現実に知覚した商品・サービスの「パフォーマンス」(あるいは価値)と、顧客がいただいていた「期待」との適合度合いがよい場合に生じる顧客の心理状態。
(宣伝会議 マーケティング・コミュニケーション大辞典