秋田に仁別(にべつ)という地名があることはだいぶ前から気づいていました。

 

東北地方のアイヌ語地名で、北海道のようにアイヌ語で川をあらわす(pet)に「別」の字を充てるのは大変珍しく(多くは 部、辺、淵(渕)、米地、辺地となる)、そのひとつだからです。

 

 

5月6日その秋田市の東北部、旭川の上流部に仁別に行ってきました。

 

旭川ダムの手前に仁別の集落があります。その東側は秋田市大平山リゾート公園で、キャンプ場、オートキャンプ場、スキー場、森林学習館などの設備があるようです。運営は秋田市が出資した公社が行っているようです。

 

仁別の集落から北北東に向かう旭川の大きな沢の名は仁別沢す。仁別の集落より奥の旭川の流域すべてが「仁別」です。

 

仁別は、北海道にもあります。北広島市の西、仁井別川上流一帯が仁別です。木の流れる川(nio-pet)、あるいは。木の多い川(ni-un-pet)出なないかと言われています(山田秀三、『北海道に地名』)。

秋田の仁別(地理院地図地図より)

 

仁別の集落と旭川

 

仁別沢(川)

 

仁別の集落を後に、旭川に沿った林道をさかのぼると、そこはは林野庁管轄の自然休養林仁別国民の森として、仁別森林博物館を中心に、これまたキャンプ場、サイクリング道路、大平山登山道などが整備さてていることになっています。

 

仁別地区には、昭和40年代初期まで細かな支沢にまで森林鉄道が走っていて、サイクリング道路はそれを利用したものです。

 

しかしそれらは、下流の秋田市大平山リゾート公園の様には利用されていないようで、森林博物館は閉館、サイクリング道路は法面崩壊で通行不能となっていました。仁別の集落からは曲がりくねった林道が一本あるだけというアクセスの悪さではそれも仕方がないといってよいかもしれません。

仁別森林博物館 かつて使用されていた機関車が展示されているも、閉館

 

いかにも森林鉄道跡らしいカーブと幅のサイクリングロード

 

しかし、サイクリングロードはいまは使われていないようで荒れていた

 

仁別林道(森林鉄道)務沢支線・務沢駅跡
 

 

秋田の仁別も、秋田杉のうっそうと茂った原生林(国有林)だったので、山田氏の解釈通りのアイヌ語地名なのでしょう。

 

江戸期の旅行家・歌人で晩年を秋田で過ごした菅江真澄は、その書で仁別を取り上げ「ニベツという地名はアイヌ語で木河の意味で、”木の良い川の辺り”や”木の多い川の辺り”を言っている。またニベチとも言う」(石井正己『菅江真澄図絵の旅』)と述べ、アイヌ語での解釈を示し、木を川に流す図絵を添えている。

石井正己『菅江真澄図絵の旅』より