私がそもそもアイヌ語地名に興味を持ったのは、1981年ころアイヌ語地名研究家の

山田秀三さんが、NHK のテレビに出演されアイヌ語地名についてお話しされたのをたまたま見たことからでした。その映像はビデオに収録してあります。

 

山田秀三氏(左)、知里真志保氏(右)

 

その時、山田さんは主に北海道の地名と東北北部の地名の類似性、つまり東北北部にアイヌが地名が分布していることお話しされました。

 

その映像で度肝を抜かれたのは、話の内容はともかく、山田さんがスタジオ内で堂々とタバコを吸っているシーンがそのまま放送されたことでした。この時すでに90近い高齢でしたが、特例でスタジオないでの喫煙が許されたのだと思います(今ではあり得ないシーンでしょう)。


タバコを燻らせながら、落語家のようなチャキチャキの江戸っ子弁で話す様子はたいへん粋で、明治生まれの大人(たいじん)の体(てい)でした。

私は東北北部にアイヌ語地名が存在していることは知っていましたが、それを研究しているすごい方がいるということに驚きました。

 

それを機に、東北北部3県の5万分の1地形図をそろえ(幸い当維持札幌にマップハウスの支店があって手に入った)、そして数年後に草風館より発行された、全4巻の

『アイヌ語地名の研究1~4 山田秀三著作集』(1982年初版)各6,000円(当時)を買いそろえました。私の買ったのは第2刷でした。

 

(第4巻は紛失し、のち買い足した)

洒脱な文章と、味ある手書きの地図が特徴

 

この4冊でアイヌ語地名の概要を知ることができました。私にとってはバイブルに等しい書です。

 

一度だけ山田氏とお会いするチャンスがあったのですが、残念ながら逃してしまいました。今思うと大変残念なことでした。

 

山田氏は東京帝大出の元通産官僚で、仙台鉱山局勤務時代、東北の山奥の鉱山に佐比内などのアイヌ語地名の付くものが多いことから研究を始めたということでした。退官後は北海道登別市幌別に北海道曹達社を起業し経営のあたっていました。

先日、アイヌ語地名探索のために資料の有用性について書きました。

今回から、私がよく利用する資料について書いてみたいと思います。

 

最初に取り上げるのは、スマホアプリ「スーパー地形」です。

このアプリは、山岳展望サイトカシミールを展開している杉本智彦氏がスマホアプリとして公開しているもので、私はiPhoneで使用していますが、アンドロイド機でも利用できます。ただし有料です。

 

アイヌ語地名の研究には、古い時代の地図、それを見るために古書店・古書サイトを探ったり、図書館通いが必要と思われるかもしtれ澗賤。しかし北海道のアイヌ語地名に関してはこれがあれば、ほぼ事足ります。

 

最大の特徴は、地理院地図が自由に閲覧できるだけでなく、北海道古地図として、道庁実測切圖東西蝦夷山川地理取調圖の全面がシームレスで閲覧できる点です。

 

 

つまりスそのすべてをマホ一台で現地持参可能です。スマホのGPS機能で現在地を確認できる点は他の地図アプリと同様です。圏外が予想される場合には、あらかじめ必要個所をダウンロードしておけば安心です。これさえあれば、理論上紙の地図を何枚も持って行く必要はありません(実際には持ってゆきます)。スマホで撮った現地の写真を登録・地図に落とし込むこともできます。電池切れを防止するために予備バッテリーを持参することをお勧めします(忘れた場合はコンビニに寄って買うことも可能です)。

 

スマホのGPS機能は常にonですので、圏外の場合でも位置を登録しておけば後でも正確な位置を確認できます。

 

使い方です。

スマホにスーパー地形アプリを取り込み、スーパー地形のアイコンをタップします

 

前回開いた地図が現れます。(私の場合、地理院地図をデフォルトにしています)。

 

地図をタップすると地図選択画面となります(現在、地理院地図が選択されていることを示している)。

その他の中から北海道古地図を選択しタップします。

 

北海道古地図選択画面となります。

 

 

北海道実測切図をタップします。

北海道実測切図の画面相当部が現れます。

 

 

東西蝦夷山川地理取調圖をタップします。

東西蝦夷山川地理取調圖の相当部が現れます。

 

 

北海道実測切図+地理院地図をタップします。

北海道実測切図と地理院地図がオーバーラップしたものが現れます(これのみダウンロード図)。

この画面は位置確認のかなり有用です。

矢印は達古武沼のタプコプ

 

 

実は私は、何となく電子地図を楽しみたいと思いスーパー地形をダウンロードしました。試しているうちに、北海道古地図の閲覧機能があることに気づき、その有用性を知ったの認識したのでした。

 

(まとめ)

わずかな投資で、北海道実測切図東西蝦夷山川地理取調圖の全面は手に入ることは大きな魅力です。

 

北海道実測切図に関しては、わたくしは全部を保有していますが、40年前で25万円し、カミさんから大目玉を食らいました。

 

東西蝦夷山川地理取調圖もレプリカを所有していますが、モノクロ版で解像度にも難がありスーパー地形にはかないません(スーパー地形ならカラーでシームレス、拡大・縮小が自由です)。

 

●北海道のアイヌ語地名探索には大変有用なツールだと思います。

 

スーパー地形にはこれだけでなく様々な機能・使い方があります。そのための公式ガイドブックも出版されています。

私が北海道内のアイヌ語地名探索に使用している地図は、現在の国土地理院の2.5万を別にすれば、主に20万分の1道庁実測切圖(以下切圖と略)と松浦武四郎の東西蝦夷山川地理取調圖(以下山川と略)である。

 

どちらも、今は使われなくなったたくさんのアイヌ語地名が掲載されていて資料的価値は大変高い。その数で言えば山川の方が多いだろう。よって地名だけを調べるなら山川が良いかもしれない。

 

切圖の方は編集を担当した技官の裁量(そもそもどのように製作・編集されたのか明らかではないが)によって地名の非常に細かい地域と、粗い地域とムラがある。例えば日高地方はかなり細かいが、オホーツク・道北はかなりラフである。

 

ではどちらが信頼できるかといえば、(わたくし的には)切圖の方である。曲がりなりにも

”実測”と称しているだけあって(道もろくにない明治10~20年代たいへんな難行だったろう)、位置はかなり正確で、現地図に近いものがある。

 

一方山川は、いかに松浦武四郎が道内ひろく歩いたとはいえ、実際に行ったところのほか、アイヌから伝聞した記録した地名のほうが多く、また、測量をしたわけではなく(伊能図等を参考にしているものとは思われるが)基本的に記憶頼りの手書きであり正確性には欠けることは否めない。もちろんそのことで資料としての価値が損われるものではないが。

 

よってやはり切圖の方を信用すべきある。

 

一例をあげてみよう。

第17回で取り上げた道東・現釧路町のタプコプ(山)についてみてみる。

図1(山川)タツコフ、リイタツコフは四角で囲まれているので山の名

 

図2(切圖)タプコプの位置に注目

 

山川(図1)と切圖(図2)を比べてみると、まずは山川には達古武沼(タプコプ沼)がない。次にタプコプ(山)の位置だが、切圖では釧路川の沿岸(左岸)にあるが、山川ではかなり内陸側に記されている。

 

現在の2.5万図(図3、以下現図)でみると以下である。(もちろん現図には山のタプコプは記されていない)

図3 国土地理院2万5千分の1地形図「細岡」

 

現図における推測として、

山川で見た場合、標高34.9mの三角点のあるの小山(D峰)が妥当と思われる。

切圖で見た場合、81.5mの三角点のあるの山(A峰)がそれに相当する。

ということになる。

 

さて、松浦武四郎は、現標茶町の塘路より3日かけ釧路川を下り、釧路川河口を出て、釧路町沿岸の昆布森に至っている。その際、達古武沼とタプコプ(山)についての言及している。

著作『東部久須利誌』によれば、以下のごとくである

また少し下り左りの方に回り一里計りの小沼(達古武沼)一ツあ有。其また下に少しの川有。さて上に

タツコフ

つまり、松浦は釧路川を下る船上からタプコプの存在を記している。もしD峰がタプコプであるなら、沼の中に船が入らない限りそれを確認することはできないだろう。そのような寄り道をした記載はない。

よって、釧路川沿いにあるAタプコプである可能性が大である。というよりそう断言してよいだろう。

 

結論

1.東西蝦夷山川地理取調圖は正確性に欠けるが、道庁実測切圖は信頼に値する。

2.現釧路町達古武地区あるタプコプ山は、標高34.9mの三角点のあるA峰である。

 

 


A峰(タプコプ)

 

釧路川の船上から見たら、こんな感じか?

 

D峰? 矢印のあたりか

達古武沼内からみたらこんな感じか?