スーパーコンピュータ「富岳」開発の総責任者、松岡聡さんのインタビュー記事を読みました。
アポロ計画を推進したフォン・ブラウン博士に憧れる科学少年だった松岡氏は、30代後半で東京工業大の教授になる逸材です。
税金の使われ方を精査した事業仕分けが行われた時は、オレゴンで開催中の国際スーパーコンピューティング学会に論文審査委員長として参加していました。
仕分け作業で飛び出した例の問いに対してどう答えるべきだったのか、をずっと考えたそうです。
「世界一になる理由には何があるのか」
事業仕分けの結果スーパーコンピュータ「京」の開発が凍結された際、科学者や知識人を含んだ声明には「我が国の科学の発展に影響を与える」と決定に対しての批判が。
でも、先の問いには正面から答えていないのではないか。
科学者が自らの研究の意義を答えられないのは、まずくないか。
松岡氏はその後第三者の立場で質問と向き合っていきます。
世界一の速度が出せる自動車は、世界一の車なのか。
そこで価値が決まるのか。
速度が世界一でも運転しづらければ、レースに勝てないのではないか。
「重要なのは使い勝手。速度よりむしろ、多様な研究の役に立つかが本来だ。『2位でもいい』と答えてもよかった。
ただし、何の研究のために、どんなマシンが必要なのかを明快に説明できなければならなかった」
そして2年後、次世代「富岳」開発に関わることになった松岡氏がまず着手したのが、スパコンを使う総勢200人の研究者たちへの聞き取りでした。
多様な研究に貢献できるスパコンはどうあるべきか。
そうして生まれたのが、高い汎用性と計算速度を持つスーパーコンピュータ「富岳」です。
富岳では新型コロナウイルスの飛沫の飛散シミュレーションも作成可能。エンジンの燃料噴射モデルの計算プログラムを開発している理研の研究者の坪倉誠さんが応用しました。
目に見えない飛沫を可視化した動画は、テレビで繰り返し流れ、航空機の乗客への説明にも使われたそうです。
ジャンボピーナッツの季節がやってきた。
塩茹でで、最高に美味しい。
この記事から、何かをやり遂げるにはミッションステートメント、本質目標をクリアにする、という最近読んだエピソードを思い出しました。
著者がビジネススクールで「非営利組織の戦略的経営」という授業をとっていた時のこと、クラスは非営利組織のビジョンおよびミッションステートメントを評価する、という課題を与えられました。
100以上もの実例を見ていくと、壮大な理想とリアリティの乏しい、空虚なステートメントがいかに多いのかを思い知らされます。
わずか5人の組織が世界から飢餓を撲滅すると言っていたり。
話はちょっと逸れますが、アメリカでは裕福な人や会社が税金対策のためにNPOを立ち上げるケースもたくさんあります。
大学の同期生の友人が、そういうところでインターンをして教えてくれました。
真面目にやっていないわけではないでしょうが、組織としてのビジョンとミッションステートメントが漠然としたものが多いのも、不思議ではないなと感じます。
そんな中で、異彩を放っていたステートメントがあり、教室の空気が一変します。
それは台風カトリーナで破壊されたニューオリンズの復興の遅さに苛立ち、財団を設立した俳優で社会起業家のブラッド・ピット氏が書いたもの。
「ニューオリンズの下9地区に住む世帯のために、低価格で環境にやさしく、災害に強い家を150戸建設する」
具体的でリアル。シンプルで誰にも理解できる、理想ではなく達成判定可能な本質目標。
なかなかに感動的でもあります。
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