KBCシネマで上映している「僕が跳びはねる理由」を観てきました。
美しい映像と登場人物たちの語り口は、ドキュメンタリーながらもエンターテインメントとしても見せる映画に仕上がっています。
KBCシネマに初めて行きましたが、ブレッソンの映画を上映するアートハウスなんですね。素敵なミニシアターが福岡にあって嬉しいです。
ドキュメンタリー映画「僕が跳びはねる理由」は、作家の東田直樹氏が自閉症である自分によく向けられる質問に答える形のエッセイを原作にしています。
13歳だった彼のイメージを演じるジム・フジワラ君を含め、5人の自閉症を持つ少年と少女たちの日常を追いながら、その周りで生きる家族たちへのインタビューと、当事者たちが受け取っているだろう感覚を形骸化する映像があちこちに差し込まれています。
映画を観る前に原作を読みたいと思ったのですが、図書館で今返却待ちの6番目。英訳はすぐに借りられました。
英訳を手掛けたのは作家のデイヴィッド・ミッチェル氏。私は彼の日本を舞台にして日本人の少年を主人公にした小説「Number 9 Dream」を読みました。
2部構成になっているその小説は太平洋戦争中の日本も描かれていて、よく練られて違和感もない英国人の作家の世界構成に驚き不思議な気持ちでした。
デイヴィッド・ミッチェル氏は広島で暮らしていたことがあるのは知っていましたが、沖縄やモンゴルなどにもいたようです。
今はアイルランドで日本人の奥さんと二人の子供たちと暮らしていて、そのうちの一人が自閉症を持つのです。
「THE REASON I JUMP」として英訳した「自閉症の僕が跳びはねる理由」は、子供の気持ちが理解できずに苦しんでいた彼と家族にまさに光を当てたようです。
映画の中にも同じく苦しむ家族がいて、彼のように本に助けられたと語っていました。
英訳本は、とても美しい本です。
書体も行間も心地よい空間が取られていて、カバーも挿絵も素晴らしく、表紙の装丁を見た時は「Number 9 Dream」のカバーを思い出しました。
カイ&サニーという二人組のアーティストで、デイヴィッド・ミッチェル氏の作品の装丁も何度かしているようなので、あちらも彼らの作品だったのかもしれません。
細かい線を積み重ねて描かれる植物や自然を描写した挿絵は、この独特な作品にとても合っているなと思います。
原作の前に英訳から読むという不思議な展開になりましたが、ドキュメンタリー映画も英語ベースなので、スムースな流れで入ってきています。
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