沖縄に10年居ましたが、マリンスポーツというか海遊びは水面辺りに張り付いているスノーケリングしかしませんでした。
海よりも山が好きだからというのは、饂飩より蕎麦が好き、といった意味不明な言い分と似通っていますが、なにしろ私は泳ぎが得意ではありません。
足が何かに触れない深さになると海は怖いし、プールで潜水はできるのに6メートルくらい下のサンゴ礁までどうしても自力で潜れず、いつも引っ張ってもらっていました。
なんでかね、と海遊びのスペシャリストたちが同席しているところで尋ねてみたことがあります。
東はスノーケルしていると体の下に小魚たちが併泳してくるウインドサーファーの家人、西は外海の玄界灘でサーフィンする元スタイリストの友人。
ふたりのお答えは、「恐怖心でしょ」。
そうなのかぁ。
だけど沖縄でのスノーケリングは、いつも安全を見守ってくれるダイバーの友人が手をつないで傍にいてくれたのに?
昨年オンラインで受講した「マインドフルネス瞑想指導者トレーニング」の中で、沖縄在住のフリーダイバー、篠宮龍三さんの名前が出ました。
素潜りで115メートルいく人です。
沖縄には太平洋戦争時に沈没した米軍のエモンズという船を見に潜るダイビングスポットがあり、そこは水深40メートルだそう。
前出のダイバーの友人にその話を聞いた時は、きっと真っ暗な中に幽霊船のような船の残骸があるんだろうとイメージしました。
あの、ピクサーのアニメーション、「ファインディング・ニモ」でサメたちが住処にしていた船のような。
ですが沖縄のような明るい海だと水深40メートルくらいではまだ太陽の光が届いていて真っ暗ではないようで。
陸上で40メートルは散歩をする距離でもないですが、篠宮氏のアジア記録115メートルはそのほぼ3倍の深海です。
話がちょっと飛んじゃいますが、陸上40メートルで思い出したのでメモ書き。
不動産会社や住宅サイトなどで表示される「駅から徒歩〇分」。
これには基準があって、「徒歩1分=80m」とのこと。
検証した人たちも少なからずいて、男女どちらでもだいたいあっているそうです。
篠宮氏は何冊か著書があり、図書館で借りられる2冊を読んでみました。
ひとつは私も大好きな映画「グランブルー」を思い起こさせる美しいカバーの、フォトエッセー的な「BLUE ZONE」。
もうひとつはアジア記録に達成し、沖縄定住に至るまでの半自叙伝的な「素潜り世界一」です。
篠宮氏もかの映画に衝撃を受け、ジャック・マイヨールに憧れてスキンダイビングを始めたそうです。マイヨール氏ご自身は映画のイメージに随分苦しめられたとも聞きますが。
おそらく今は多くのスキンダイバーがそうであるのかもしれませんが、篠宮氏はマイヨール氏に続き、トレーニングにヨーガと呼吸法を取り入れています。
メンタルトレーニングのためでもあり、内臓の容積を小さく抑えるといったフィジカル調整にも。
毎日朝起きたときからやることは同じ。何年も何年も同じことを繰り返している、と著書に書かれていました。
海の状況は朝と昼とでは全く違っていたりする。その海の変化に自然に対応できるようにするには、日常を淡々と同じように繰り返すことが大事なのだ、と。
毎日繰り返しの練習は、ヨーガと瞑想においても重要な要です。
深海の中では孤独は感じない、とも書いています。孤独は人と関りがあって生まれるものだと。
篠宮氏は主催した大会で友人の死を経験したり、先達者ゆえに手探りで進み、周りの理解が得られなかったりといったことも多かったようです。
何度か訪れる生きづらさの中でも自分を振り返り、その行動や気持ちの変化などを省みる試みや深い検証をしています。
禅を学ぶなど自分との向き合い方の道を探していった人であり、丁寧な文章から多くのことが伝わってきます。
アスリートの著書は数年前に一冊だけ、スキージャンパー葛西紀明氏の書いた「40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方」を読みました。
40歳を過ぎたビジネスパーソンたちに向けられたもので、加齢によって避けられない様々な心身の変化の過程に対応し、仕事のパフォーマンスも上げていくための、減量を含む多岐にわたる指南書となっています。
以前の記事はこちら。
葛西氏の著書にも、アスリートが最高のパフォーマンスが行える「ゾーン」に入るための心身の整え方が出てきましたが、アスリートたちは年齢による身体能力の変化を身をもって知っている故、如何に効率よくトレーニングするのかをよく知っています。
スキンダイビングもスキージャンプも、死と隣り合わせの状況を体験するスポーツでもあります。
自分の心と体を守るための日々の営みが大事なのは間違いないですね。
オキシャンティのサイトHPはこちらから。