毎年この時期になると、北海道から玉ねぎを送ってもらいます。先日届いた今年の箱には、レッド・オニオンを含めた3種の玉ねぎに加えて「インカのめざめ」という小ぶりのじゃがいもが入っていました。湯島食堂のレシピ本に、"甘みのある「インカのめざめ」は、ぜひ一度食べて欲しい。"とあり、紫玉ねぎも使ったレシピなのでさっそく作ってみました。

onions


うちは玉葱の消費量が多いので、あっという間になくなりそうです。

saute


「じゃがいもの華やかソテー」という名のレシピですが、
玉葱の紫とジャガイモの鮮やかな黄色が映えて、見た目にも楽しい一品です。



NYのデリのお惣菜はカラフルです。ある時久し振りに戻った東京で、デパチカのお惣菜屋さんのウインドウを見たときのこと。「みんな茶色で黒いんだな、これを西洋人たちは見て美味しいと感じるんだろうか」と思ったことがありました。子どもの頃から親しんだものは忘れないと思うけれど、日々見ているものにも影響を受けるのです。
はじめは見た目に美味しそうとは感じなかったNYのデリ。赤や黄色のパプリカ、白、黄色、紫と、いろんな色のポテトと玉葱。ラディッシュなど皮に色のある食材をうまく取り合わせて色鮮やかに作るお惣菜に、いつしか慣れていきました。

このソテーのシーゾニングは、にんにくとオリーブ油以外は塩とナツメグ、そして胡椒だけです。塩はソテー中に少しづつ加えていき、ナツメグと胡椒は火が通った後に入れて味を調えるのですが、最後に振ったナツメグの香りが甘いジャガイモにうまく絡まり、美味しいのです。

ナツメグはニクズクという木の、果実の種の核部分です。ニクズクはスパイス諸島として知られるマルク諸島に群生していた常緑樹で、大きく育つものは12メートルくらいになります。ナツメグは6世紀にはアレクサンドリアに運ばれ、中国では消化器疾患の薬として、インドやアラブ諸国でも消化器疾患、肝臓や皮膚病の薬として使われていました。アルコール飲料による宵と眠気を増大させる働きもあり、媚薬として使われてもいたようですね。ヨーロッパには十字軍が持ち込んだと考えられています。
しかしコーヒーといい、イスラム圏から西洋に持ち込まれたいいもの、もしくは定着したものってたくさんありますね。食用に使われだしたのは随分後で、16世紀以降です。


ナツメグを初めて食べたのは、輸入品のおつまみ用(?)のフレイバー・チーズを食べて、まっずーい、何この味?!と思ったのが最初の出会いだったと記憶しています。その後の体験は、いかにも安いお肉を使っている、という感じのハンバーグを食した時のナツメグの味が強烈で、これは不味い味、もしくは匂いのつよいものなどをごまかすためのスパイスなんだろうかと思っていました。

でも、その後に出会ったほんとうに香りの良いナツメグは、全然違いました。火山灰を含んだマルク諸島の土壌に群生していた木の果実の種。粘土質の土を持つグレナダでは世界の3分の1が生産されています。様々な記憶を閉じ込めた、太古の風のようなスモーキーな味がとても好きです。


塩とナツメグのハーモニーがあまりに美味しいので、ポテトチップスのシーゾニングにも応用してみました。薄くスライスした「インカのめざめ」に塩とナツメグを振り、それを大好きなハンダマと。




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