こんな映像を観ました。

Gill Zamoraという名の、FBIで訓練を受けたForensic artist(何と訳すのでしょうか、犯罪科学アーティスト?)、捜査では目撃者などの証言から人物スケッチ、いわゆる人相描きをする人相学の専門家です。このムービーは、彼がある企画に参加したボランティアたちの人相を、顔を合わせることなく描いていく過程と結果を、参加者や彼自身のインタビューを交えて綴っていきます。

家具がほとんどない広々としたロフトで、カーテンで仕切りをした向こう側にあるソファに座る人を、いろいろな質問をしながらスケッチしてゆきます。あごの形、特徴がある部位は?
単純な質問ですが、それに対しての反応、劣等感であったり、母親に容姿をからかわれたエピソードなど、過去のトラウマなどを感じさせるようなものも滲み出てきます。




Zamora氏は穏やかな声と、知的で力強い瞳が魅力的です。参加者たちは顔の特徴を説明してスケッチを描かれる側、そしてその人物を外から見る側に分かれたようです。参加者の一人が、待合室で一緒になった人とフレンドリーにして、と説明されたと言っていますが、そこではグループ分けされた二人が待機して少し時間を過ごしたのではないでしょうか。
ビデオ後半ではZamora氏がソファに座った新たな参加者に、今日は先程出会った人の顔の特徴を話してください、と質問しながらスケッチを描いていきます。そうして一人の人物の、ふたつの人相画が出来上がるのです。

彼の言葉がとても印象的です。左側、自分自身が語った人相画を「こちらはあなたが作り出したあなた」、右側を、「こちらは誰かがあなたを表現したもの」、と言っています。そして自分の説明した左側よりも、右側が美しいのです。

鳩のアイコンの石鹸が有名なダヴ、使ったことはありません。これはその企業PRのムービーです。多くの石鹸がそうであるように、動物性脂肪を使っています。私個人はこちらの製品に惹かれるものはないのですが、このコマーシャル・ビデオの精神性はとても美しいと思います。

スケッチを描かれた面々の目撃者たち(笑)、待合室に同席した側の各コメントは、編集では総じて肯定的です。素敵な細いあご、とても奇麗な青い瞳。フレンドリーに、と言われているので、お互いによい印象が残るような時間だったのかも知れません。それによる結果だとしても、あるいはその時は素直な心からではなかったとしても、少なくともフレンドリーにと心がけた時に相手に与える自分の印象、表情、姿、はどうなのかに気づきがあったと思います。

この映像で思い出したことがあります。
NYでまだ学生だった時、クラスメートが先の卒業生が作ったビデオの話をしてくれました。私は実際にその映像を観てはいないのですが、話を聴いただけで全ての映像が浮かんできた、印象深いムービーです。

それはこんな言葉で始まります。「あなたが今いるこの場所を、describe(説明/表現)してください。」
カメラはゆっくりと回転し、問われた声の主は話してゆきます。「柔らかい光の中で、暖かく、安全でゆっくりとしている...。」
詩的な表現の柔らかい声を背景に、カメラは本棚、テーブル、壁、などを画面に納めてゆきながら360度ほど回転し、最後にその声の主にフォーカスすると、彼がブラインド、盲目なのだと解るのです。

見ているもの、は見たいもの。自分が見たいものに囚われないようにしてゆきたい。そして自分は自分が思っているよりも美しいのだ、というこの言葉を覚えておきたいです。



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