勉強したいと思っていた般若心経。難解だということでなかなか手を出せずにいましたが、とても解りやすい本があると教えていただき、即購入。年末年始のお休みに読みました。


OkiShanti 沖縄、ヨーガ。-HS

イラストと風景写真がたくさん編集された素敵な本です。
下はインテグラル・ヨーガ、ヨーガ・スートラを解りやすく解説しています。


はじめての般若心経。シンプルで、よくできた物語のようなお経だという印象を受けました。般若心経といえば、観音菩薩が登場して教理を展開 する中心部分を勉強するのが通常のようです。この割田剛雄氏の本では、お釈迦様が弟子たちを連れて霊鷲山(りょうじゅせん)に説法に向かう序文から始まり、よ く知られた教理部分を挟んで釈迦が観音の説法を褒め称え、全員でマントラを唱えながら法悦に至る結びのエピソードで終わります。般若心経という教本が、ドラマチックな展開を伴なう深い考察で構成された哲学的な内容ゆえに、広く永く読誦されているのだなと納得しました。

ヨーガとは何か、を説いているヨーガ行者のバイブルである「ヨーガ・スートラ」は、仏教に深い影響を受けていると知りました(伊藤 武氏著、ヨーガ大全)。例えば、ヨーガの鍛錬により達成するサマーディー、悟り。いくつかある悟りの段階ですが、最も理想の境地である「無種子三昧」の種子(ビージャ)は唯識、大乗仏教の用語です。ヨーガ・スートラが編集された5世紀は「空」の思想が盛んであり、この二つの文献、「般若心経」と「ヨーガ・スートラ」は仏教とヒンドゥー教が互いに深くかかわりながら発展してきたことを語っていて興味深いです。西遊記の三蔵法師のモデルである玄奘の漢訳、般若心経の"心無罣礙(しんむけいげ)"はヨーガ・スートラの根幹である言葉、"心の作用を死滅することが、ヨーガである。"と対応し、そして般若心経の主人公観音さま、アヴァローキテーシュワラはヨーガの神様、シバ神なのです。

般若心経では、霊鷲山で釈迦が一人静かに深い瞑想入ります。それに共鳴して瞑想を深めてゆく観音に気づき、釈迦の十大弟子の一人、舎利弗(しゃりほつ)が質問します。"どうすれば悟りに至るのですか?" それに観音菩薩が説法します。前半では"色即是空 空即是色"と空の思想で悟りに至る心得を説き、後半では悟りに至る実践方法、秘儀のマントラを唱えることを教えます。それが、ガーテー・ガーテー、というあの有名なマントラです。

涅槃に行く者よ、と繰り返すマントラ、真言を持つお経。じつは般若心経は智慧の女神、プラジュニャーパーラミター女神(般若波羅蜜多仏母)を礼賛するものなのです。涅槃に行く者とは、まさしく彼女。
観音さまの化身であるシバ神、アヴァ(下を)ロー(見る)キテーシュワラは天界から下界の苦しみを見下ろし、涙をこぼされました。その涙がプラジュニャーパーラミターとターナー、二人の女神になります。ターナーの語源(渡る)がパーラミ(彼岸に行く)と同義とみなされ、ふたりの女神はのちに同一視されていきました。

大乗仏教のひろがりは、プラジュニャーパーラミター女神とターナー女神の信仰とともにありました。チベットに現存する仏像を作るための文献には、プラジュニャーパーラミター女神がいかに美しいかの仔細な説明があります。「般若心経」の陀羅尼(マントラ)は彼女そのものであり、女神に祈ることによって悟りに導いてくれるのです。しかしながら無種子三昧に至るには、その女神も手放していかなくてはならないようですが。



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