【映画】ドント・ウォーリー | 野球と映画、ときどき…

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野球中心にスポーツ観戦が大好きです

ただ、映画鑑賞は私のライフワーク

吹奏楽、美術鑑賞、舞台鑑賞そして猫

好奇心のおもむくまま「おきらく」に

生活を楽しむをモットーにしています

ドント・ウォーリー(2018・米・113分)

監督:ガス・ヴァン・サント

主演:ホアキン・フェニックス

 

自動車事故により胸から下が麻痺。

車いすの生活を余儀なくされた

ジョン(ホアキン・フェニックス)が

アルコール依存症を克服しながら

皮肉と辛らつなユーモアで

風刺漫画家として

第2の人生を歩み始める。

 

この映画の主人公

ジョン・キャラハンは実在の人物で

2010年に手術後の後遺症(感染症)で

59歳の生涯を終えています。

映画はジョンが生存中から

彼の半生を描いた著書

「ドント・ウォーリー」の映画権を得た

ロビン・ウィリアムス(2014年死去)が

生前、映画化を熱望した作品です。

当時からガズ・ヴァン・サント監督に

脚本を依頼していたそうですが

完成を待つことなく

ロビン・ウィリアムスは

自ら命を絶ちました。

そのロビン・ウィリアムスの遺志を継ぎ

ホアキン・フェニックスを主演に

映画は完成しました。

 

ガス・ヴァン・サント監督は

社会派映画から重厚な人間ドラマまで

幅広いジャンルの映画を撮っています。

ショーン・ペン主演の「ミルク」

ロビン・ウィリアムス出演

「グッド・ウィル・ハンティング」も好きですが

私が監督作の中で一番好きな映画は

マシュー・マコノヒーと渡辺謙さん主演

日本の青木ヶ原樹海を舞台にした

「追憶の森」です。

これは、しっとりした大人の映画です。

ラストシーンは激しく感動します。

 

今回の作品の成功は

主演のホアキン・フェニックスの

渾身の演技もさることながら

テーマを障がい者の社会復帰でなく

アルコール依存症からの脱却

断酒会の活動にフォーカスしたことだと思います。

 

ジョンの周りの断酒会のリーダー

断酒会のメンバー、障がい者センターのスタッフ

介護人やセラピストなど彼の周りには

常に彼を優しく支え見守る人々がいます。

 

介護人や障がい者センタースタッフが

彼に非情な態度をとるのも

ある意味彼を可哀想な障がい者扱いしない

障がい者であっても健常者と対等に

ルールを守らせようとプロ的な仕事に徹します。

ここが日本じゃクレームを恐れての

中途半端な対応になると思うんですね。

 

断酒会の個性豊かなメンバーがいいですね。

ジョンを障がい者と知りつつも容赦なく

彼の本質的な問題、課題を提起します。

ジョンはメンバーとの対話、議論の中で

自分はなぜ障がい者になったのか

なぜ事故を生き起こす原因を作ったのか

そもそも、そこまで酒を浴びるように

飲むようになったのは、なぜかという

問いの答えをジョン自らが導き出します。

ここが凄いところで

もし、あらゆる依存症

アルコールもだし麻薬なども恐らく

こうしたセラピーが有効だというのが

理解できます。

しかし、それは参加するメンバーや

リーダーの議論の進め方で

自己主張をしたり相手にも共感や

反論をもいとわないアメリカだから

生まれる成果であって

日本でその通り行くかと言えば

ケースバイケースかもしれません。

 

また、ジョンが事故前に

どういう仕事をしていたのか

分かりませんが

社会保障の手厚さと

周囲の理解は羨ましかったですね。

それがまさしくチャンスを与え

チャレンジを後押しする

アメリカンドリームかもしれません。

 

多くの聴衆を前に講演会スタイルで

客席に我が半生を語りはじめるジョン。

映画の終着点も悲しいものではなく

明るい未来をさすような

穏やかなランディングです。

 

この映画は障がい者問題でも

依存症脱却支援の映画でもなく

何かを許せない人

許せない何かが分からない人にも効く

人はどんな状況からでも

何歳からでも変われるよという

人生の応援歌のように思えます。

 

変えることができるものを変える勇気と

変えることができないものを受け入れる事

「許す」ことの本質と何を「許す」のかを

私たち観客に示してくれる名作です。