最終回は、終わらない | 野球と映画、ときどき…

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最終回は、終わらない  日本文理高校 甲子園準優勝の真実


岡田浩人著 ベースボール・マガジン社刊 1400円+税



ドライアイでお悩みの中高年の皆さん


そして野球を愛する人たち


すべてに捧ぐ涙のドキュメンタリー




通勤の電車内で、食事後のちょっとした時間に


読み進めては泣きました。


普段ドライアイで夕方は目が痛いのですが


この本のおかげでいい感じに涙で眼球が潤ってよかったです。




高校野球ファンなら記憶に新しい試合だと思います。


2009年夏、全国高校野球選手権大会準優勝


新潟県代表 日本文理高校の準優勝の軌跡を


選手の幼少期から大学4回生となった今までを


監督・関係者のエピソードも絡め丹念に追っています。


そこには著者のチームに対するピュアでブレない愛情が感じられて


彼らの準優勝という成績が奇跡ではなく必然であり


いうなれば彼らが歩んできた軌跡の集大成であったと気付きます。




先週、新年開館直後の図書館で


ふと手にした本の表紙にインパクトがありました。


試合後、アルプスに挨拶してチーム全員で


ベンチに向かっている選手、監督、マネジャー達の写真。


誰も泣いていない、うつむいていない、中には笑顔の選手もいます。


これじゃないか!高校野球って。


心をわしづかみにされて、直感で読もう!と決めました。




この本のハイライトは、もちろん


2009年8月24日、中京大中京との決勝戦。


6点ビハインド、9回2死走者なし


日本文理高校、絶体絶命のピンチ。


最終回、8番若林尚希の打席から攻撃は始まります。


後続の選手の一打席ずつを


本人の言葉や監督、仲間の証言も含め振り返ります。


VTRで画像として見直すより当時の背景を知ることで


より記憶が鮮明に蘇り、また違った感覚で試合をとらえられます。


打者一巡、最後のバッターも若林君でした。


映画ファンの私は各打席の文章がビジュアル化して


頭の中で映像として読み進めていたので


最後のサードライナーは


打った瞬間の映像がスローモーション化して


グラブにボールが収まった音すら聞こえるような見事な筆致でした。




そこに至るまでのエース伊藤君のストイックなまでの野球への情熱


故郷を離れ、奥様をなくされ新潟に骨をうずめる覚悟で選手に向き合う監督


監督や選手を支えたスポーツ用品店店主や


週末の練習試合をバックネット裏で見守り追っかけ名物ジイさんたち等


選手だけでなく彼らを支える周辺の関係者にまで


実に丹念な取材をしているのが伝わります。




エース伊藤君中心の構成ではありますが


選手ひとりひとりの持つドラマと


数々の失敗挫折を超えて


チームが一つになっていく過程がきちんと描かれています。


そのチームワークが彼らを準優勝導いたのだと確信できます。


「決して実力が全国2位のチームではなかった」


と取材したすべての選手が語ったそうです。




あとがきにも書いてありましたが


準優勝した彼らがその後の人生


順風満帆かといえばそうでもありません。


大学野球で現役で野球を続けている者


プレーヤーではなくマネージャーとして裏方に回った者


大学を中退し仲間と同じ大学に再入学し野球を続ける者


地元で就職し軟式野球を始めた者


それぞれ違った人生を歩んでいます。




それでも彼ら全員から出た言葉は


野球への感謝でした。


本気で何かに取り組んだ人間の心から出た言葉だと思いました。




著者の岡田さんは新潟出身のライターさんです。


心がこもった一冊です。


岡田さん、本を書いてくださって、ありがとう。


昨年7月刊行された本ですが大手書店には在庫もあるでしょうし


アマゾンなどでもすぐ手に入ると思います。


時間ができたら、ぜひ読んでみてくださいね。