各国の国籍法のベースはほとんどが「生地主義」と「血統主義」のどちらかであるか、その両方の組み合わせであり、日本は「血統主義」を採用していると前に書きました。(→国籍法の基本中の基本「血統主義」と「生地主義」


日本は「血統主義」で、父親か母親のどちらかが日本人であれば、その子供にも日本国籍を与えます。これを「父母両系血統主義」と言います。
ただし、これは、昭和60年1月1日以降の話。
その前日までは「父親が日本人であれば、日本国籍を与える」=父系血統主義を採っていました。
母親が日本人でも、父親が外国人だと、その子供は当然には、日本国籍になりません。
どうなるか?
まず、父親の本国の国籍法が父系あるいは父母両系の血統主義を採っていれば、その父の国籍を与えられます。父の本国の国籍法が生地主義であれば、その子は父の国籍をもらえず、国籍がないことになるので、
国籍法 第2条3項に該当して、結局日本国籍を取得できることになります。

第2条(出生による国籍の取得)
子は、次の場合には、日本国民とする。
1 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
2 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
3 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

さて。
母親が日本人で、父親の国籍法が血統主義の時には、子どもは父親の国籍を取得することになります。、子供に日本国籍を与えたい時にはどうするか・・・?

以前、相続の依頼がありました。
被相続人は依頼人のお母さんで、日本国籍。
お父さんは長年日本に住んでいる在日韓国人(特別永住者)。
依頼人は3人兄弟で、集めた戸籍を見ると、父母は結婚届けを出さずに、3人とも、出生後に認知されていました。
これは、子どもに日本国籍を与えたいために、わざと婚姻届を出さずに、認知だけしたものです。

さらに付け加えると、
韓国の国籍法も改正されて、1998年6月14日以降は、父母両系血統主義に改正されましたが、それまでは、父系血統主義(父親が韓国籍の場合のみ、子どもは韓国籍を取得する)でした。このあたり、日本と韓国は似ています。

ただ……韓国の国籍法(旧)には、
1、韓国籍の男性と結婚した外国籍の女性は、結婚で当然に韓国籍を取得する
…となっていました。
韓国籍の女性と結婚した外国人男性は韓国籍を取得しません。
(1998年の改正以降は、結婚では韓国国籍を当然には取得せず、帰化の手続きが必要、となりました)
ちなみに、この、結婚したら国籍を与える国も結構あります。たいていは、韓国と同じようにその国の男性と結婚した女性に与えるとなっていますが。

つまり、依頼人のお母さんの場合、婚姻届を出していたら、お母さんは結婚により、子ども3人は出生により、全員韓国籍になるはずでした。
それを避けるためには、婚姻届を出さない、という選択しかなかったのだと思います。
(相続の手続きの後に、お父さんの戸籍を韓国から取り寄せましたが、別に韓国で結婚しているという事情はありませんでした)

国際結婚で生まれた子どもの場合には、国籍はどこか、というのは、生まれたときの両親の国籍法を調べなくてはわかりません。結構改正されていますから、場合によっては、同じ親から生まれた兄弟でも、国籍が違ったりします。

正直、国籍法と言うのは、国民の為にあるのではなくて、あくまで国の恣意的な政策の為にあるのだと言う気がします。