先に書きましたように、日本語には「美術館」と「博物館」という2つの訳語があるので、プーシキン関係の展示をしている「ムゼイ=ミュージアム」を「博物館」、美術関係作品を展示する「ムゼイ=ミュージアム」を「美術館」と訳すことにします。
というわけで、ここは、プーシキンとは関係のない、名前だけを借りた、そして、有名で巨大なプーシキン美術館の重箱の隅をつつくような話です。
このプーシキン美術館は、ロシア芸術文化高揚運動が盛んになった19世紀末にモスクワ大学芸術学部長だったツヴェタエフという人が発案し、マーモントフ、マローザフ(モロゾフ)などの富豪達が資金を提供して作られた美術館で、その名も次のように変化しています。
1898年定礎。
ふと、思いつきましたが、これは、最初のマトリョーシカが作られたと言われている年です。
1912年アレクサンドル3世芸術博物館。
ロシア革命後モスクワ美術館。
1937年プーシキン没後100年を記念してプーシキン美術館。
という流れです。
私が強調しておきたいことは、この美術館が教養を高めると言いましょうか、学生の学問研究に資する目的を強く押し出していることです。
日本の美術館は、どうも「見せてやる」という学芸員の高慢ちきな雰囲気があって気分が悪い。
そんな意味で、この美術館は、外国人の私にとっても、親しみやすい美術館なのです。
そして私が一番興味を引かれるのは、彫刻部門で・・・・
世界の有名な彫刻作品のイミテーションが展示されていることなのです。
とこかのブログに掲載した写真ですが・・・・
特に有名な部分だけ紹介します。
右側にある、足を投げ出して座り込んでいる彫刻が瀕死のガリア人(カピトリーノ美術館)
奥の扉の左にある、背中が見えている彫刻は、ミロのヴィーナス(ルーブル美術館)
左端、こちらを向いている頭部の欠損した彫刻がサモトラケのニケ(ルーブル美術館)です。
括弧内に発掘されたオリジナル作品のある美術館名を書きました。
彫刻作品の見方として、「アルカイック」「クラシック」「バロック」という様式の分類があります。
是非善悪は別にして、私は、この分類を中学校時代に美術の授業で習いました。
こうした様式を代表する作品をイミテーションですが、一覧できるのがこの美術館なのです。
さらにもう一点、彫刻作品の写真は、撮影者に著作権が生じるため、自分で写真を撮っておくと、著作権が自分にあるので気をつかわずに画像を使えるという長所がありまして、この美術館で撮影しまくったのです。
では、紹介します。
硬くぎこちなく、部分に目が奪われる様式がアルカイック。
その典型例が下
クーロスです。
同様に固さが残る御者像が下
そして
穏やかな動きと理想的な調和を示すのが「クラシック様式」
その内7頭身を理想とする、古代ギリシャのポリュクレイトス作ドリュフォロス(槍を担ぐ人)が下
この作品のオリジナルと言いましょうか、
パブリックドメインになっているウィキメディアの写真を見つけたので下に貼り付けておきます。
パブリック・ドメイン, Link
古代ギリシャ彫刻、クラシック様式ですが、こちらは、少し時代が下がって、8頭身を理想とした優美様式、リシュポスの円盤投げです。
さて、一気に時代を飛びますが
中世ヨーロッパ
彫刻が柱に縛りつけられたような表現
大きなくくりで言えばゴシックが下
そしてルネッサンス
若いミケランジェロのピエタです。
そして
ミケランジェロ
ジュリアーノ・メジチの墓
この作品のオリジナルについては、別に書きますが
オリジナルがあるのが墓所である関係から狭くて暗くて撮影しにくいのです。
とまれかくまれ
こんな風に西洋彫刻しをイミテーションで一覧できるのがこの美術館の魅力なのです。