キャノンデール2019モデル 発表会&試乗会 | ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

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8月の第1週目、今年も恒例となったキャノンデールの翌年モデル発表試乗会に参加してきました。富士山の麓、山中湖の富士急ハイランド周辺のテストライドに最適なコースで身体に合ったサイズの試乗車を思う存分に走らせることができる、取り扱い店おの特権ともいえるものです。準備された試乗車は実に200台に迫る数で圧倒されますが、「これだけ準備しないと皆さんにはサイズの合ったもので試乗していただくことができませんので」というフレームサイズを幅広く展開するメーカーの苦しいところであり、そしてとても正しい、有益な姿勢です。
新しくなったマウンテンバイクレーサー「F-Si]については機会があって同社の開発スタッフとドイツのコースで試乗させていただくことができましたが、ロードバイクカテゴリーに関しては、一体どんなものが出てくるのか未聞です。果たして魅力的なニューモデルがでているのでしょうか。あるいは気になるあのモデルはどう変わってしまっているのでしょうか・・・ 噂のレベルでは新しい「エアロロードが出るということも耳に入ってきています。市場からすれば「いまさら感」のある後発のエアロロードは果たして「使える」ものなのでしょうか。期待と少しの不安、ワクワクしながらその会場へ入りました。



注目のエアロロード以外には、新しいロードカテゴリーである「NewRoad」? 一般的には「グラベルロード」とか呼ばれるカテゴリーの種類の充実でしょうか。SLATEを筆頭に太めのタイヤを装着した全地形型のロードバイクがディスクブレーキの浸透とギヤ比のワイド化によりさらに進化し、新しいシリーズも追加されました。包括する路面が増えたことによってその用途も広がり、一般的なロードバイクにツーリングバイク的な要素をプラスされたような感じです。タイヤサイズは様々ですのでユーザーの目的に応じてタイヤを変更して使用することができるようになったのもディスク普及の大きなメリットと言えるでしょう。さらに控え目ながら有効なフェンダー/ラックマウントを装備していることもこれらのカテゴリーの特徴です。アメリカと言えばあまりフェンダーのイメージにつながりにくいですが、キャノンデール発祥の東海岸やヨーロッパ、そして雨の多い日本では独自のイメージを作り出すアイテムになりそうです。
そしてキャノンデールと言えば並みのカーボンフレームを凌ぐといわれるアルミフレームの「CAAD12」ですが、こちらも変わらず。フレーム単体で販売される「COLORS}も新色が追加され、こちらも要チェックです。



 
後だしジャンケン!?エアロロード 「System Six]
本格的なTT/トライスロンモデルはラインアップしながらも「エアロロード」には否定的?ともとれる姿勢でこれまで「控えて」きたように見えましたが、どうして今ここで?というのが正直な疑問でした。むしろ他社では「やり過ぎた?」という失敗感から後戻り的な進化(退化?)をしつつあるというカテゴリーなのに、です。しかし、開発力には定評のあるキャノンデール社が出してきた、ということは何らかのアドバンテージを含ませて「満を持して」出してきたに違いありません。店主個人の使用用途とはかけ離れるカテゴリーかもしれませんが、開発や設計力としては非常に興味があります。実物を見ながら詳細を追及していきたいと思います。

「ホイールありき、の最新エアロロード」。
実物を目にしてどうやらその辺りに答えがあるのでは?と直感的に感じました。「自社開発」というコレまでホイールには手出さなかったキャノンデール社ですが、どうやら同社の開発陣はその分野にも手を出さずにはいられない、つまり市場の製品では満足しきれなかったようです。64㎜というハイトのクリンチャータイヤ用のカーボンリムを採用したこの「ホログラム KNOT(ノット)64カーボンホイール」の最大の特徴はそのリム幅「32㎜」と23Cのタイヤを組み合わせて装着した際のタイヤ形状(断面)に尽きるといってよいでしょう。結果的に最も空気抵抗の低減ができる「タイヤ+リム」形状が実現でき、最も速く走ることができるホイールが実現できるのだというのです。バイク全体での「空力」つまりエアロ効果を問う際に、ホイール自体の空気抵抗は実は大きなものになります。投影面積としてはフレームを含む車体、あるいはライダーの面積は大きなものですが、抵抗は速度の2乗に比例して増加し、維持して走り続けるためのエネルギー、つまり出力は速度の3乗に比例して増加します。バイクもライダーも同じ速度で空気を切り裂いて進みますが、ホイールの上側は進行方向に向かって進むため、ホイール外周上面では走行速度の2倍の流速、そこに向かい風などが加われば相当な空気抵抗になっていることがわかっています。「ホイールの空気抵抗が重要な要素を占める」というのはこのためです。そしてリムを空力的な最適形状にするために欠かせないのはリムからブレーキとしての機能形状を免ずるためのディスクブレーキ。エアロロードやTTバイクでディスクブレーキを採用する理由は、その制動力が、というよりもリム形状の空力最適化が主目的だと言って良いでしょう。つまり、UCI規定を含めて優れたディスクブレーキシステムの確立なしには、妥協のないエアロホイール、そしてエアロロードの実現はできなかった。今回になってキャンデール社が本気のディスクエアロロードを投入した理由はこの辺りなのかもしれません。 遅れてきた、というよりも「機は熟した」と判断のもとでの投入ということになります。
 
ホイール、ブレーキシステムを元に統合的に組み合わされるフレームも空力について熟慮されている必要がありますが、それはキャノンデール社にはさほど難しい事ではありません。流れの方向に対して効果的に翼断面形状にすればその効果は得られることはSLICEでも獲得している技術です。むしろ、エアロ形状によって生じる「デメリット」をどうクリアするか、でしょうか。エアロ形状、つまり前から見て「薄っぺらい形状」にすると、結果的に横方向やねじれに対する剛性が著しく低下してしまいます。横剛性や捩り剛性の低いフレームは踏んでも進まず、コーナーリングの操作性が低下してしまい、ロードバイクとして総合性能が低いものになります。加えて縦方向の剛性ばかりが高くなり、ショックの吸収がされなければ転がり抵抗の増加にもなります。これらが今までエアロロードに対して否定的だった要因と言えます。 通常のロードバイクと全く同じ重量で空力的に効果のあるエアロロードを作ろうとすればこれらの問題が顕著に表れてしまうでしょう。System Sixではこのエアロロードの欠点をクリアするために断面形状の幅を大きく落とさずに「翼断面形状」となるようにデザインが行われています。縦剛性をコントロールするためにSynapseで培った形状を取り入れています。 結果的には、これはメーカーも認めるところですが、Super Sixのような軽量性は多少犠牲にならざるをえません。ただし、メーカーが謳うように勾配7%程度までなら横剛性の劣る「ただ軽いだけ」のバイクに勝り、重量を味方にできる下りではその空力性能、旋回性なども加わってどんなバイクよりも少ない出力で速く駆け下ることができるはずです。

重量が増加、とはいえそれはSuperSixなどのカーボンロードに対してであって、ぞれでもクロモリやチタンの金属製フレームよりは軽いこのエアロロードでは大きなデメリットとはなり得ないはずでしょう。それよりも車速が30㎞/hを越えれば空力性能は影響が現われるということが計算でも明らかですから用途によってはメリットは大きくともデメリットは小さい、という捉え方が正しいように思います。 フレーム内臓工作のメリットを活かす為にも「電動コンポ」搭載した完成車の他、フレームでの販売もあります。ちゃんと進んで、曲って、そして速く走れる。これが本当のエアロロードだよ、ってのがやっと登場しました♪
ホイールありき、の姿勢でのシステム(統合)設計がされているため、「2種類のブレーキシステムから選ぶことができます」という、ブレた設計はされていません。


 
新しい守備範囲を包括「TopStone」誕生
SLATEを筆頭とした「太いタイヤシリーズ」が形成され、「ロード」というカテゴリーに囚われない新しいカテゴリーが確立してきたと言ってよいでしょうか。完全にロードジオメトリーでフロントサスペンション、42という太いタイヤを備えたSLATEに近い40というタイヤ太さでありながらシクロクロスレーサー「Super X」「CAAD X」に近いジオメトリーでオフロード性能を付加した「Top Stone(トップストン)」。サスペンションは備え無くとも、そのクロスカントリーレーサー「F-Si」に次いで大径のタイヤ外径は路面の障害物に対しての走破性、転がり抵抗の低さが武器になります。引き換えにデメリット的にロードバイク的な運動、操舵特性は幾分犠牲になり、スプリント的な加速性は期待できないかも知れませんが速度だけが魅力ではないという方にとってはむしろ優先すべきメリットを手に入れたバイクになっています。アルミツーリングバイクというキャンンデール社のルーツに通じるラック/フェンダーを装着しての積載ツーリングが可能です。あるいは充分なタイヤクリアランスを活かして街中で最適なタイヤサイズ+フェンダー(泥除け)を装着して活用することもできそうです。これまで本来は「レース用だった」シクロクロスバイクで代用していたことをその目的にあった使い方ができるようにバイクが出来上がった、と言えます。



 
それでも変わらずお勧めの「CAAD12 DISC」「Synapse Carbon」
店主が引き続きお勧めなのは、これらはモデルチェンジがなく継続なのですが「Synapse Carbon」と「CAAD12 Disc」です。これらのモデルはチェンステイ410以下、トレイル値6台(~以下)という完全なロードバイクジオメトリーながらディスクブレーキを備えることで30cを超えるタイヤ装着が可能で、グラベルロードというよりも運動性能の高い広い守備範囲のロードバイクとしてレースを含むアドベンチャーサイクリング等に広く活用できます。さすがに「着」を争う競技には他のモデルをお勧めしますが、自己の限界に挑むロングライドや未知のコースに分け入るライドには最適、疲労低減に寄与してくれることでしょう。奇しくもこれらはどちらのモデルも店主好みの「ロービジ(low visibility 低視認性)ロゴで、控え目な恰好の良さ、です。
一方で全22色の中から好みのCAAD12フレーム(ディスク仕様設定なし)が選べる「COLORS」もこれは!という新色の追加です。実は「良質なアルミフレーム」を完成車でなくフレーム/フォークで購入しようとすると案外無いのですが、これだけのフレームカラーから選べるのはキャノンデール、CAAD12だけですから。