グレタ・ガルボのアンナ・カレーニナを観ようとしたが、配信で観ることができるものにビビアン・リーとキーラ・ナイトレイの主演のものもあった。3人ともに好きな女優さんでこのストーリーでどんな風に演じられているのか見比べたくて3本とも観てしまった。この作品のなかでは女性は家庭環境においても法的にも時代的にも自分の人生について自由にならない。アンナの美しさありきの物語でベースは恋愛ものとはいえ、原作を読んだ昔に強く感じたのは、「自分の中の何かが変わってゆくのを感じる…」「自分の気持ちに従う…」というニュアンスの表現があったことだ。女であればおそらく親の庇護のもとに成長し、親の選んだ将来安心であろうという人と結婚し、子供を持つという当たり前のコースを辿る。そのために必要なことを親に躾けられ、勉強したり習ったりする。だがあるとき気づく。自分の意志で道を選んでいなかったことを。自分の望む選択をしてもどうにもならない方向にしか行かないことも。それが恋愛という軸のなかで描かれてゆく。

登場人物はロシア帝政時代の貴族が主であるから、主人公のみならず美しい女優さんたちが身に着ける衣装やアクセサリー、舞踏会は映画鑑賞としては美しさを堪能させてくれた。

グレタ・ガルボは不倫をしている感をもたらさないほどの高貴な美しさに満ちていて、息子への愛とヴロンスキーへの愛を秤にかけることの苦悩に苛まれる様子がみていて耐えられなかった。ビビアン・リーは悩める様子の表情が技巧的なほどで、ほんとうに苦しんでいる当事者のようにみえた。最後発作的なほどの行動もリアルだった。キーラ・ナイトレイは現代的に綺麗であり、ヴロンスキーと恋に落ちる最初の舞踏会でのダンスがほんとうに素敵だった。その恋に落ちてしまいそうなあのダンスの振り付けが観ているものをも恋に誘ってくるようだ。あの振り付けは映画のためのものなのか、そういうダンスがあるのか。あれを踊ったら自分の中の何かが変わってしまうのではと思わせるシーンだった。