2005年の映画。作家トルーマン・カポーティがカンザス州で起こった殺人事件を取材し、「冷血」という本を書き上げる過程を描いたものである。「冷血」という本を本屋で目にしたことはあるのだけれど、怖い気が先に立って読んだことはなく、カポーティという作家も知らなかった。と、思っていたのだが、あの「ティファニーで朝食を」もこの作家の作品だと知って驚いた。もちろん映画も観たことがあるし本も読んだことがあるがあまりのジャンル違いに結びつかなかった。

映画では捕らえられた犯人に寄り添いながらも自分の作家としての欲もちらつくのがわかる。同情してくれているようだけどどこまで本当なのだ?という、心開いて打ち明けている犯人側の不安も伝わってくる。またこのカポーティの作中で取材に同行する友人の女性作家は、実際に幼馴染の友人で作家のハーパー・リーである。このひとはアラバマ物語の作者で、その映画もほんの少し前に観たばかりだった。アラバマ物語はハーパー・リーの子供の頃のことであり、近所にいた年の近い男の子がカポーティでありそれらしい子もでていた。かなり昔の話ではあるが黒人人種差別のひどさや、子供ながらの色々なこだわりや大人や社会に対する感情などが描かれていて一気に観てしまった。父親のグレゴリー・ペックの忙しいながらも子供のことに心を砕く様子にも誠実さが感じられた。

ハーパー・リーもカポーティも幼少期に遭遇した出来事の中で発生した感情がこころのなかにずっとあり、色々なかたちに醸成された結果のものが本となり映画となったのだろうか。社会問題のなかでは不安と保身と誠実に揺さぶられて善悪など選べなくなってしまうのが人間だ。