短歌味体Ⅲ 3002-3101 (作品集) | nishiyanのブログ

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この列島の一住民です。(九州)
今までにない最悪の復古的イデオロギー政権を退場させるため消費(GNPの約6割を占める家計消費)を意識的に控える活動を広めることを開始。2017.12.14に休止。★ひとり継続中。

短歌味体 Ⅲ 日付
短歌味体Ⅲ 3002-3005 ああシリーズ・続 2019年01月04日
短歌味体Ⅲ 3006-3008 ああシリーズ・続 2019年01月05日
短歌味体Ⅲ 3009-3011 ああシリーズ・続 2019年01月06日
短歌味体Ⅲ 3012-3015 ああシリーズ・続 2019年01月07日
短歌味体Ⅲ 3016-3018 ああシリーズ・続 2019年01月08日
短歌味体Ⅲ 3019-3021 ああシリーズ・続 2019年01月09日
短歌味体Ⅲ 3022-3025 ああシリーズ・続 2019年01月10日
短歌味体Ⅲ 3026-3028 なぜ掘るかシリーズ 2019年01月11日
短歌味体Ⅲ 3029-3030 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月12日
短歌味体Ⅲ 3031-3034 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月13日
短歌味体Ⅲ 3035-3037 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月14日
短歌味体Ⅲ 3038-3040 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月15日
短歌味体Ⅲ 3041-3043 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月16日
短歌味体Ⅲ 3044-3046 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月17日
短歌味体Ⅲ 3047-3049 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月18日
短歌味体Ⅲ 3050-3052 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月19日
短歌味体Ⅲ 3053-3055 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月20日
短歌味体Ⅲ 3056-3058 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月21日
短歌味体Ⅲ 3059-3061 なぜ掘るかシリーズ・続 2019年01月22日
★★
短歌味体Ⅲ 3062-3064 〈あ〉の物語シリーズ 2019年03月02日
短歌味体Ⅲ 3065-3067 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月03日
短歌味体Ⅲ 3068-3070 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月04日
短歌味体Ⅲ 3071-3073 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月05日
短歌味体Ⅲ 3074-3076 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月06日
短歌味体Ⅲ 3077-3079 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月07日
短歌味体Ⅲ 3080-3082 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月08日
短歌味体Ⅲ 3083-3085 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月09日
短歌味体Ⅲ 3086-3088 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月10日
短歌味体Ⅲ 3089-3091 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月11日
短歌味体Ⅲ 3092-3094 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月12日
短歌味体Ⅲ 3095-3097 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月13日
短歌味体Ⅲ 3098-3101 〈あ〉の物語シリーズ・続 2019年03月14日

 

 

 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3002
ひとりでも世代でも
〈ああ〉には
分かち合えない年代記がある


3003
実感は発生しても
よく知らない
世の中に子どもの〈ああ〉がポチャンと落ちる


3004
知ったかぶりの青年は
鏡見て
〈ああ〉〈ああ あ〉とつぶやく


3005
同じ道をなんどもなんども
通ってきた
老いた〈ああ〉は沈黙へ滑り込む


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3006
離陸前の〈ああ〉には相反する
ものも対流し
色色に微振動する


3007
不用なものを振り落とし
ぶるっと
見ぶるいして〈ああ〉は飛び立つ


3008
やっぱり〈ああ〉も整髪し
見映え良く
服を着て立ち現れる


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3009
夕暮れに演歌のドア
開けてしまった
湿った空気を〈ああ〉は呼吸する


3010
エーケービーやケヤキザカも
アンチエイジングのエロスは
〈ああ〉と心地よい風受けているか


3011
同じ歌でも湿度や
気温や
流れる風や速度が〈ああ〉ちがうなあ


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3012
〈ああ〉というたった一言
の振る舞いにも
根深い物語がある


3013
〈ああ〉にもありふれた
日々の
くり返す朝がありありとある


3014
たそかれどき〈ああ〉は自らの内へ
深く深く
沈み込んでゆくゆくは


3015
〈ああ〉の内踏み固まる
殺意が踏み
芽吹き踏み花開く踏む夜がある


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3016
勢いよく落としてしまった
皿だから
〈ああ〉は激しく負に振れる


3017
ゆっくりと正に振れた
〈ああ〉だから
やわらかな日差しを浴びている


3018
転換する心模様に
〈ああ〉もまた
むくむくむっくと変身する


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3019
小さな人間(じんかん)から
湧くつむじ風
いたたまれずに〈ああ〉が顔を出す


3020
〈ああ〉と言う所、とっとっと
言葉の岩に
しがみつき〈おお〉と叫ぶ


3021
リニアーには対応しない
言葉の影に
息潜めてこころ立っている


 


  [短歌味体Ⅲ] ああシリーズ・続


3022
〈ああ〉もう終わりなのか
とぼとぼと
家路をたどり夜のカーテンを引く


3023
(今日でお別れね
もう逢えない)
古い歌謡がふと口を衝(つ)いて出る
 
註.「今日でお別れ」歌:菅原洋一


3024
もう終わりの壁突き抜け
見知らぬ地
とりあえず歩き出す


3025
終わりの先にもまた始まりあり
死の淵までは
〈ああ〉は何度も立ち上がるさ


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ


3026
薄暗い乾いた井戸の
底に立ち
水はまだかまだかとザクザク掘る


3027
スコップの押し返す
力は肌に
痛みとともに刻み込まれる


3028
ここ掘れワンワンに遠く
物語の
底にひとり立っている


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3029
わからない水源への
つながりを
求めてつらい深堀の日々


3030
ほんとうに掘りに掘って
ようやく
他人(ひと)の言葉が光を帯びる

註.「他人の言葉」は、
詩は 書くことがいっぱいあるから
書くんじゃない。
書くこと 感じること
なんにもないからこそ書くんだ
 (「『さよなら』の椅子」 吉本隆明 より)


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3031
〈あ〉を掘り当てたと思いきや
〈お〉だった
理想の〈あ〉と〈い〉はどこに眠り居るか


3032
ゴロゴロと小石ばかりの
地層に入る
災厄の匂い踏みしめゆく


3033
演歌の〈あ〉も情報砂漠
の〈あ〉もともに
乾いた地層に傷つき倒れてる


3034
倒れてる〈あ〉を抱き起こす
ほこりや汚れ払い
修復して〈あ〉を据え直す


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3035
傷ついてるのに救急車は
〈ああ〉来ない
サイレン鳴らない silent night


3036
ひとりの内に湧き上がる
時の病は
ひとり静かに修復するしかないか


3037
誰かを当てにすることは
するまい
mine mine mine mining


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3038
小さい子砂場でmining
どんなイメージの
船を掘り出しているのか


3039
貨幣価値ゼロのmining
でも、ほら
天気も良いし、日差しもあったかい


3040
mine mine mine mine
mine ベッサッソン
小さい子の手が踊っているよ

註.フォークダンスの曲「マイム・マイム(水だ水だ)」」(Mayim Mayim)の歌詞は、
「マイム マイム マイム マイム マイム ベッサッソン」。


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3041
「なぜ掘るかって聞いてんの?」
それはね
えーと、それはね、ないないないしょ


3042
この砂の手触り感
うーん
(スナー)なんとも言えないなあ


3043
夏の風のいい感じの
総量を
掘り尽くし量り尽くすことはできないな


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3044
掘りに掘っていると
(ああ あなたも)
ぼくとおんなじシャツだと気づく


3045
水滲む細い道があり
掘り進むと
現れ出て来るよ来るよ


3046
ばったりと久しぶりの
出会いには
とってもふしぎな空気流れる


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3047
掘り出した〈あ〉〈い〉〈お〉の破片
キラキラと
光はじめて〈あおい〉水流る


3048
流れに手を差し入れて
掬(すく)ってみる
青やわらかに滴したたる


3049
青い実を踏んでピカソの
青い門
くぐる、見渡す限りの青い夜


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3050
なぜ生きるのかと同じく
わからない
ただいい感じイメージ線上を掘る


3051
深みから誘う手の感じ
イメージや
言葉以前のタスキを感じる


3052
きみも掘るぼくも掘る
時には
病に倒れてしみじみ食べる


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3053
深みの出会いだから
あいさつは
沈黙の内にキラリと光るだけ


3054
キラリ光を踏みゆけば
ああ あなたも
わたしも、生きてるね、この日差し


3055
下水(したみず)は言葉の代わり
音楽の
かけら るる るるる るる 流れる


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3056
ほんとにほんとにくるしい
と思って
一点に鋭く収束するは 死


3057
(岩盤でもう進めない)
と思っても
回りあちこちしてるとふしぎと光差す


3058
固く閉じた冬の心も
少しずつ
雪解けし芽吹いてゆくよ きっと


 


  [短歌味体Ⅲ] なぜ掘るかシリーズ・続


3059
どこでも人は掘ってしまう
どんどんどん
未生以前も死後も掘り進む


3060
掘っても仕方ないものも
ほらほら
ずんずん突き進んでいくよ


3061
こうかいのあとずっと遅れて
ハズレでしたよ
さびしい知らせが戸を叩く


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ


3062
顔出した〈あ〉が風に揺れ
芯の方に
エナジー充填しているよ


3063
風に ふと 物語の
予感よぎり
言葉の通路〈あ〉は歩き出す


3064
道々に寄せては返す
風の物語
中を突っ切ってゆく 〈あ〉は


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3065
〈あ〉の励起状態から
ひとり ズズズ
独擅場(どくせんじょう)に立つもある


3066
独り〈あ〉は、古井戸の
時間の
ノノノ層から突沸する


3067
〈あ〉は未開でも野蛮でも
ないナナイ
無限情報湛(たた)える海さ


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3068
差し出される手にためらいの〈あ〉は
かるーく触れ
あったかい流れに〈ああ〉と息づく


3069
どっくどくんふくらむ〈あ〉の
結合手
青白く光り放ち始める


3070
〈あ〉は今日も歩み出す
人っ子一人
いなくったって前へ前へ


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続



3071
流れ来る木の葉ひとつひとつ
集まると
澱む形が重心を生む


3072
緑や枯れ葉色の
いのちの色に
〈あ〉は染まりふるえ始める


3073
時には流木の
数々に
息を呑み身構える〈あ〉


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3074
例えば極微の時間
色んなもの
引き連れ突き抜け〈あ〉が浮上。


3075
一瞬の不確かな気配
残像に
〈あ〉の変色がしっとり残る


3076
流れる光ながれる
わずかな
温もりが〈あ〉にまとわりついている


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3077
ぼくは騎手〈あ〉にまたがって
ビルの谷間も
ビル群も突き抜けてゆく


3078
ぼくと〈あ〉は二つの鼓動
一つに
響き合い駈けてゆく


3079
温かな〈あ〉の背を降りる
たかぶりは
着着着と退いてゆく


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3080
たくさんの峡谷越え
〈あ〉は〈わ〉と
異郷に出会い〈あわ〉となったのだった


3081
ひかれるなぜか惹かれる
それでも
暗雲のかけらひとつふたつ


3082
ひとつの言葉ができる
瞬間までには
無数の泡あわわと消えた


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3083
何気ないくり返す日々の
突然に
〈わ〉の引力圏に引かれる〈あ〉は


3084
ふるふると〈あ〉が光り出し
E・Tの
指触れあう〈あ〉と〈わ〉は



3085
今までは知らない道が
〈あ〉の前に
さあどうぞと開かれてある


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3086
結ばれて〈わ〉の村へ
通ってゆく
夕暮れがあはあはと頼りない


3087
くり返し訪れる村の道
足跡は
〈わ〉の形に変わりゆく


3088
父の〈あ〉は母の形の
村通り
弓なりに夕べに折れてゆく


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3089
母の〈わ〉の子らにぎやかに
ここが本拠と
見慣れた広場を駆け回る


3090
わわわわわわぁわぁわぁわぁ
わわわわわ
わあわあわあわわわあわわわわ


3091
〈あ〉と〈わ〉の村の敷居を
行き来する
父の〈あ〉はさびしい小道を歩む


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3092
果てしなく時間降り積もり
〈あ〉と〈わ〉の物語
見分けのつかない砂粒となり


3093
雨に濡れた砂粒が
〈あわ〉吹いて
古いしこりを反芻している


3094
古びてつなぎ目も見えない
物語が
ふうっと息吹きかかるのを待っている


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3095
「泡立つ」という言葉に
触れるとき
自分のことかと〈あ〉と〈わ〉が波立つ


3096
人違いでもその名が
確かに呼ばれ
心ふるえて記憶の村へ


3097
もはや剣を断たれた
「真剣」のように
〈あ〉は言葉の森をさ迷うばかり


 


  [短歌味体Ⅲ] 〈あ〉の物語シリーズ・続


3098
よろこびもかなしみもみな
見分けつかない
生きた時間が古びていく


3099
古びても脱ぎ変わる
衣装
新しい春を着込んでいる


3100
あ、それはとはっとする
何か関わり
ありそうなものが過(よぎ)って行った


3101
衣装変わっても
くり返す
〈あ〉の物語 人の形にうねる