短歌味体 Ⅲ | 日付 |
短歌味体Ⅲ 2002-2003 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月15日 |
短歌味体Ⅲ 2004-2006 通路シリーズ・続 | 2017年09月16日 |
短歌味体Ⅲ 2007-2008 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月17日 |
短歌味体Ⅲ 2009-2010 通路シリーズ・続 | 2017年09月18日 |
短歌味体Ⅲ 2011-2014 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月19日 |
短歌味体Ⅲ 2015-2017 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月20日 |
短歌味体Ⅲ 2018-2019 通路シリーズ・続 | 2017年09月21日 |
短歌味体Ⅲ 2020-2021 通路シリーズ・続 | 2017年09月22日 |
短歌味体Ⅲ 2022-2024 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月23日 |
短歌味体Ⅲ 2025-2026 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月24日 |
短歌味体Ⅲ 2027-2028 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月25日 |
短歌味体Ⅲ 2029-2030 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月26日 |
短歌味体Ⅲ 2031-2032 通路シリーズ・続 | 2017年09月27日 |
短歌味体Ⅲ 2033-2035 通路シリーズ・続 | 2017年09月28日 |
短歌味体Ⅲ 2036-2038 通路シリーズ・続 | 2017年09月29日 |
短歌味体Ⅲ 2039-2040 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月30日 |
短歌味体Ⅲ 2041-2042 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年10月01日 |
短歌味体Ⅲ 2043-2044 いいなシリーズ・続 | 2017年10月02日 |
短歌味体Ⅲ 2045-2047 無意識的シリーズ | 2017年10月03日 |
短歌味体Ⅲ 2048-2050 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月04日 |
短歌味体Ⅲ 2051-2052 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月05日 |
短歌味体Ⅲ 2053-2055 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月06日 |
短歌味体Ⅲ 2056-2058 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月07日 |
短歌味体Ⅲ 2059-2060 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月08日 |
短歌味体Ⅲ 2061-2063 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月09日 |
短歌味体Ⅲ 2064-2065 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月10日 |
短歌味体Ⅲ 2066-2067 即興詩シリーズ・続 | 2017年10月11日 |
短歌味体Ⅲ 2068-2070 即興詩シリーズ・続 | 2017年10月12日 |
短歌味体Ⅲ 2071-2072 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月13日 |
短歌味体Ⅲ 2073-2075 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月14日 |
短歌味体Ⅲ 2076-2078 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月15日 |
短歌味体Ⅲ 2079-2081 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月16日 |
短歌味体Ⅲ 2082-2084 無意識的シリーズ・続 | 2017年10月17日 |
短歌味体Ⅲ 2085-2087 微シリーズ・続 | 2017年10月18日 |
短歌味体Ⅲ 2088-2089 戯れ詩シリーズ | 2017年10月19日 |
短歌味体Ⅲ 2090-2091 微シリーズ・続 | 2017年10月20日 |
短歌味体Ⅲ 2092-2093 ねこシリーズ | 2017年10月21日 |
短歌味体Ⅲ 2094-2095 主流シリーズ・続 | 2017年10月22日 |
短歌味体Ⅲ 2096-2099 微シリーズ・続 | 2017年10月23日 |
短歌味体Ⅲ 2100-2101 微シリーズ・続 | 2017年10月24日 |
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2002
「これどうぞ」ともらったものが
みどりに
照り映えて太宰治(だざい)の歌うたう
註.太宰治「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。」(「葉」) |
2003
ひとりだけもらえなかった
さびしい子
にもいつか幻のサンタが訪れるさ
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2004
通路なら歩く汗出る
足音の
響いてこころ滲みてゆく
2005
幻の通路だから
瞬時に
抜ける、飛躍・接続・切断・自由
2006
自由自在に見えるけど
孫悟空の
手の内を回る日々だねえ
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2007
ありふれた木の葉一枚
もらった
数十後にかがやき出す
2008
しみじみと葉脈を
たどる旅
みどり生き生き色匂い立つ
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2009
幼な子とわれは通路に
相対(あいたい)す
行きと還りのすれちがう視線
2010
幼年は年輪を編み
われはただ
年輪を下ってゆく
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2011
一枚の枯れはじめには
静かに
見過ごすほかない乾いた夜がある
2012
かきわけて樹木の芯へ
下りてゆく
言葉の樹液をしずかに散布してみる
2013
のぼせてはいけないきみは
きみぼくは
ぼく隔たりの夜に・さくら・の・ちる
2014
どうしようもない、ないないない
の谷間にも
静かな歌がながれ漂ってある
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2015
おしゃべりな子どもらよそ目に
無口な子
幻の口から世界を下る
2016
通い慣れた通り道の
雑草も
季節や日々に新しくなびく
2017
幻に切り開かれた
山原(やんばら)に
色あざやかに花々の咲く
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2018
花占いの一枚ごとに
ふるふる
古い通路に入り込んでいく
2019
目をつむる深みの〈大洋〉
ふき上がり
アニメの通路にウヨウヨ言葉は荒れる
註.『母型論』(吉本隆明)の〈大洋〉イメージから。
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2020
しずかに椅子に座ってる
だけなのに
さらさらさらと流れゆくものがある
2021
縁語の網にもかからない
ただ深く
降下してゆく古い主流がある
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2022
時経てば滾(たぎ)る濁りも
しずまる
ことがあり凪の水面ゆらゆら
2023
しずまりの夕暮れ時は
虹色の
微小成分風に溶けている
2024
ありふれた言葉ひとつに
開かれて
溶け出す秋、滲み入る夕暮れ
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2025
閉じたドア、通り慣れた
記憶たよりに
きみはじっとネコのように待つか
2026
突然の雨と閉ざされたドア
ああままよと
雨にぬれてこころ放つもよし
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2027
人の側にそっと小石
置いている
水面にかすかな波紋立っている
2028
荒んだ関係の世でも
そこでブレーキ
ここでもブレーキ心のひもゆるめる
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2029
「もうお終い」の曲が立ち
上がるとき
身は小さな旋律とぼとぼ去る
2030
不意打ちに幕が下りる
のくり返し
カフカの『城』を遠望する
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2031
思っても仕方ないけど
言葉無き
太古を思う黙々の内に
2032
言葉が無いならばただ
ネコのように
風景の中しずかに溶けている
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2033
他人の引き絞り放つ
言葉弓の
だだダダダダと通路を抜けていく
2034
選択のあわいに不明の
森がある
言葉を紡(つむ)ぐ背だけが見える
2035
よろこびやかなしみの背
のみ見える
ひっそり森にまだ地図はない
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
2036
押し寄せる大気や人が
押し寄せる
通路にドラマの動き始める
2037
誰にでも通路があって
なじみの
出入りもありひっそりにぎわう
2038
通路と通路とがはるか
離れていても
共鳴する時がある
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2039
(あっ 葉のしずくが落ちましたね)
(ああ そうですね)
二人の水面日差し受け響き
2040
(ああ そういうことがありましたね)
(ええ)
時が過去から棚引いてくる
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
2041
視線をふと人間界の
はずれにやると
静韻(セイン)としずまりゆくよ
2042
スカートのタイトな対立も
いつしか
ルーズ・ソックスと消えている
[短歌味体Ⅲ] いいなシリーズ・続
2043
(いいな、それいいな)
遠くの
木々が紅葉し始めている
2044
(いいないいな、めちゃいいやん)
見渡せば
一面の紅葉におおわれる
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ
2045
透き通るあの青空と
この空気
知らぬ間に秋、包まれているわたし
2046
小さい子のように筋道は
通れない
ただ異変が肌を流れる
2047
(あい・うえ・お)言葉は遠くに
飛んでも
心は今ここを流れている
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2048
やっと咲き出した
金木犀の
黄色い香に小さな時間流れ出す
2049
どこからともなくやって来る
小さな
時間、イメージ引き連れ花開く
2050
西行ほどは気がかりなく
ただどこかに
金木犀の咲いてあるのがある
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2051
きっかけもなくふと浮かんだ
北御門(きたみかど)さん
熊本に住まいもはや現世になく
註.もう何十年も前、雑誌か新聞の記事で二三度出会ったことがあるにすぎない。苗字だけ浮かんだ。トルストイ研究者、北御門二郎。 |
2052
名前しか知らないけれど
農に出た
北御門さんの足取りを思う
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2053
つらくても朝起きて出る
筋道を
超えた峠を越えてゆく日々
2054
くり返し行ったり来たり
重い扉
開けてあいさつ交わす朝もある
2055
筋道からはばからしくても
この宇宙(てん)匂う
道とぼとぼと行き来するよ
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2056
上履きの切れたいっしゅんの
(あっ(・・・))
意味を探査するけはい流るる
2057
自分のことなのに(あっ(・・・))
見知らぬものが
背後に立っていることがある
2058
自分のよく知らない接続法
が稼働して
見知らぬもの押し寄せて来る
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2059
ひと振りでインクにじみ出
なくても
意志と言葉は走り出ている
2060
訪ねて不在のあいさつに
小石を
ひとつふたつみっつと並べて帰る
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2061
小石をひっくり返したら
何が出るか
うすうす感じ取る者がいる
2062
すききらいすききらい
と上り詰め
幻の花咲き始める
2063
感じるは信の度合
に加速され
幻の深みに大魚をつかむ
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2064
(あっ 落ちた)木の葉一枚
波面に落ち
さざ波立って深みへ沈む
2065
(あっ つめたい)反応は
深みより
瞬時に起動・伝播して来る
[短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続
2066
はしに風吹く食事の
時には
橋は端ばかりがクローズアップ現代
2067
顕微鏡!とつぶやくと
虫たち
巨獣となり暴れ回る
[短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続
2068
風が吹いている、ただそれだけ
なんだけど
(かぜが・ふいて・いるよ)
2069
風から左も右も意味も
消去して
ただ肌合いに直に感じている
2070
表面の粗い編み目の
対立と
均衡の底にはゆるいいといとの
全体の註.自然詠と状況の詩との二重性か融合のようなものを意識して。
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2071
歩み出す踏みだす足の
癖々は
自らも知らぬ性格と呼ぶべきか
2072
ものを見て内に鳴り響く
音楽は
あれあれあれよと不明のままに
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2073
「ああ、そうだったね」
と言いながら
避(よ)けてそちらの方には歩まない
2074
二心(ふたごころ)あったとしても
言葉の
水面は昨日のように静か
2075
言葉に色は出なくとも
顔色は
ふおんふおんと微かに震う
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2076
(知らないなあ)とつぶやいて
こころは
大空巡り一点の曇りあり
2077
一点の曇りもないという
言葉たちは
その女に石を投げる
2078
一点の曇りもない
大空は
願望されたまぼろしの空
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2079
見慣れた〈もの〉は時代とともに
変幻しても
時を超えて似た出会いする
2080
ふろしきにつつまれてゆく
未来は
どこかの家の玄関に狼煙(のろし)立つ
2081
ふろしきだけたたまれてゆく
静けさに
出航する汽笛が響く
[短歌味体Ⅲ] 無意識的シリーズ・続
2082
テーブルに落ちたひとしずく
この部屋の
空気引き寄せ色合い変える
2083
物語の主流に付いた
ひとしずく
枝毛のように支流へと伸びる
2084
言葉の背後に漂う
もやもやは
気配として絞られゆく
[短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続
2085
微のうちにびびびびびっと
ひかり走り
風景がひびっと変換されゆく
2086
ひとりきりの微はたよりなく
見えても
あまたの人の深みに眠る
2087
ビットの海を泳ぎ渡り
藻や苔を
身にまとってやっと今ここに
[短歌味体Ⅲ] 戯れ詩シリーズ
2088
びん びびん Mr.ビーン
異国の
テレビから消えて今どこに
2089
べんべんべん べべんべんべん
ベントルイス!
という町が今誕生する
[短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続
2090
微微微 微微 びびびびびびび
びぃびぃび
びーん 伸びる伝わる共鳴する増幅する
2091
小さな虫が滑り込んだか
ここで脱ぐ
わけにもいかずに異和に絶え絶え
[短歌味体Ⅲ] ねこシリーズ
2092
人ならばむっとするところ
ねこだから
はいはいどうぞと道をゆずる
2093
知らない通りに迷い込む
建て込んだ
家間から急にみゃおのする
[短歌味体Ⅲ] 主流シリーズ・続
2094
しろうまに乗ってかける
時代は
ただただ切片ばかりになぎ倒されゆく
2095
主流に霧立ち上る
朝には
時の深みをしずかに飲み味わう
[短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続
2096
一滴には不変に見えて
静かの海
微viewと匂い立ち上がる
2097
びんびんと響き感じる
ことなくて
はっと振り返ると背後に迫る
2098
微は微のままに眠り居る
高速の
走る心は微の竜巻と巻き上げていく
2099
かびんの時代よ生けられた
花々に
むせる鼻むせる肌の
[短歌味体Ⅲ] 微シリーズ・続
2100
微に入り微に魅入られる
孤立する
たましいも微々と信号する
2101
他人には聴こえない微が
ありありと
見聞きできるとき病のドアも近い