鈴木忠平『虚空の人』文藝春秋 | ある人の野球観戦記

ある人の野球観戦記

アマチュア野球観戦を主に取り上げている、雑記文です。

 清原が判決を受けてからの4年間を、『嫌われた監督』の著者が周囲を含めた人々の葛藤を描いた。

 巨人へ移籍して後の清原は、豪放磊落な印象だったが、逮捕されて以後の清原を見ていると内面の弱い一人の人間だったのだという事が分かった。その弱さが魅了させていったのだろうが、それが周りの屈託を引き出して、葛藤を余儀なくされるのかなと思わせた。

 読んでて胸の奥底をシクシク刺激させるものは、それが読者者の魂に刺さってくるのだろう。書かれる対象に対して分かったように書いている作品が多い中で、書き手の葛藤を遠慮なく書いている事で余計に心を揺さぶられるのだろう。スカウトを務めていた人に「食い物にしている」と指弾されて臆しているように見えたりするのも、その光景の一つだ。