幼き ぼくが 出会ったのは
不思議な形の 果物だった
艶やか 紫 その色は
あやしく 前に 立ちはだかる
どうやって食べるの?
どんな味がするの?
おいしそうに 食べる皆を 横目に
ぼくは ぽつり こう言った
「嫌いだからいらない…」
食べ方わからぬ ぼくの
精一杯の 強がりだった
まろやかクリームに 導かれ
向かう道は 大人へ続く
さっくりタルトは ふくよかに
たわわに実った いちじくは
季節の香りを 放ちだす
期間限定!新作ケーキ♪
「いちじくとホワイトチョコのタルト」
秋めいた風が 吹いていた
ちいさなぼくが 通り過ぎていった