船橋屋織江 花吹雪
横浜から小田原へ向かう途中、大磯でちょっと寄り道して来ました。 向かったのは、船橋屋織江というお店です。
”船橋屋織江”と聞いて?!と思った方は、和菓子に詳しい方だと思います。
JR大磯駅からおしゃれな洋館を右手に眺めながら坂道を海の方へ下って行くと国道1号線沿いに船橋屋織江のお店が見えてきました。 こちらの本家は、江戸深川で練り羊羹の美味しいお店として当時(江戸後期)一時代を築いた名店の”船橋屋織江”です。
今回紹介します船橋屋織江は、大磯の別荘族の御用達として昭和8年(1933年)に出された支店です。 その後、本家の方は戦後まで存在したらしいのですが今は無くなっているので、こちらのお店がその名店の名を現在に伝える貴重な存在になっています(名店なので、分家も含めその流れを汲むお店が他にも有るかも)。
店内に入ってみると、片側にはあられ等が入ったガラス瓶が並んでいて、反対側のガラスケースにはこちらの看板商品の花吹雪などが並んでいます。
ただ、その理由は分からないものの、現在こちらでは家伝の練り羊羹や生菓子は扱っていないようです(ちょっと残念)。 江戸から伝わる名店の羊羹は、もう口にすることは出来ないのでしょうか。
花吹雪を含めいくつかこちらのお菓子を買って来ましたので、今回はそれらを紹介してみます。
最初は、その花吹雪です。 いわゆる玉子煎餅で、落花生を散り行く桜の花びらに見立てた風流なお菓子。 生地は厚みも有り、落花生は地元産や千葉県産を使用していて、1枚1枚個別包装されています(良く見かける落花生煎餅とは少々趣が違います)。
生地は香りも良くて、小麦粉と玉子の風味もしっかり感じられます。 そして、控えめな甘みに加え、何としっかりした塩味も。 ちょっと見た目を裏切る甘辛味の美味しさが味わえます(良く仕上げられています)。
次は、千鳥焼。 千鳥の姿をした人形焼きのようなお菓子です(画像では分かりにくいかもしれませんが表には大磯の文字も)。
細かな気泡がビッシリ詰ったカステラ生地は、ふっくらとした柔らかさ。 中は滑らかなこし餡になっていて、小豆の旨みが十分に楽しめます(恐らく餡を使った唯一のお菓子)。
船橋屋織江は、ある事(省略)から柿の種でも知られています。 お店では、柿の種が入ったガラス瓶とは別に、ピーナッツの入った瓶も並んでいるので、自分好みのブレンドで”柿ピー”も作れます(それぞれ量り売り)。
外観は市販の物より若干大きめで、色目も濃い。 なので、味も濃厚そうに見えますが、ピリリッとした辛味は有るものの、意外と醤油味はさっぱり。 その分お米の風味もしっかり伝わってきて、普通の柿の種とはやはり一味違います(今まで食べた柿の種の中でも一番美味しい)。
最後は名前を失念してしまった小さな短冊状のあられです。 大きさは柿の種より少し大きいくらいで、厚さは1mm程度。 サクサクの軽い食感が心地良いあられです。
見た目から黒ゴマを練り込んでいる と思ったのですが、食べてみるとゴマぽくも無い。 でも、何と表現していいのか独特のコクがじわりーと感じられ、生地からは醤油の香りの良さとほんのりとした甘みも伝わってきます。
見た目とは違って、何だか奥の深い美味しさが感じられる興味深い一品で、最後は食べきるのが惜しくなったくらい(かなりオススメです)。
お店だけ見ると良く有りそうな町のお煎餅屋さんですが中々どうして、こちら船橋屋織江、ただの煎餅屋ではありませんでした(また買いに行くつもり)。
船橋屋織江(2020年12月閉店)
神奈川県中郡大磯町大磯
TEL: