スタートから勢いよく前に出たのは
池江璃花子
その特徴的な
しなやかで大きなストロークは健在だった
そのままスピードに乗る
目標は
インカレ参加標準記録26秒8
この数ヶ月間
闘病生活を続けながら練習してきた
今の自分の実力を確認する場と考えている
本当に待ち望んでいたレース
競技者として
競う気持ちを大切にしながら楽しみたい
知ってほしい
病気の人達にも
自分が復帰できたということ
ここまで強くなれるということ
見てほしい
この一年
やってきた思いを爆発させて
目標を叶えたところを
わかってほしい
逆境から這い上がっていく時には
どうしても希望の力が必要だということ
レース前に
そうコメントしていた
残り15 メートル
やはり息が上がる
でも
ここは負けたくない
アスリートとして
負けたくない気持ちは
まだ残っていた
泳ぎきった
タイムは26秒32
目標とした標準記録を突破した
またここで泳げたこと
自分のことだけど感動した
戻ってこれたんだなと実感した
第二の水泳人生が始まったんだなって
私は戻ってきた・・・
レース後
プールに向かって
静かに一礼
ゆっくりと歩きながら
大粒の涙を流す
映し出されたその映像に
目頭が熱くなる
僕らの感情を
激しく揺さぶったもの
勝利の喜びではない
再び闘うことを決意した
ハタチの希望の眼差し



