定職に就いていない俺と妻は、夫婦ともにギャンブラー。

競馬場で知り合った筋金入りの俺らは、若いころからギャンブルで生計を立てていました。


しかし、そんな人生に陰りが出始めました。


高校を中退したとき、俺はすでにプロの麻雀士として食っていました。

しばらくは、親のスネをかじりながら、お小遣いは麻雀で…という感じでした。


親は、就職をしろと言いましたが、何

をやっても割が悪そうで、とてもそんな気になれず、

結局は麻雀で稼いだ資金を元手に、パチンコや競輪、競馬、競艇と、ギャンブラーの人生を選びました。

※1


20代半ばで、妻と知り合いました。

いい女なのにギャンブルで生きているということに、すっかりほれ込んだ俺は、彼女と一緒に暮らすことにしました。


妻は、負けが続くと、水商売や風俗で稼いでくるので、俺たちの生活はかなり安定したいい暮らしぶりだったと思います。


将来の見通しもできたので、30歳のときに入籍。

俺たちは幸せでした。


妻はいつでも、俺を助けてくれました。

もちろん、妻の稼ぎが悪い時には、俺が場を増やしたりして、うまくやっていました。

※2


30代半ばになったとき、妻が風俗で指名が来なくなり、稼げなくなりました。

2人とも今までの人生で一度たりとも地道に働こうと思ったことがなかったので、

それから働く気もなかったですし、

何より雇ってくれるところもないでしょう。


いつになく弱気な発言をしていた妻でしたが、2ヵ月ほどすると、また呑気に遊びに行ったり、買い物をしたりし始めました。


きっと公営ギャンブルで儲かったんだろうと思い込んでいた俺は、別に何も聞きませんでした。

あまり興味がなかったとも言えます。

※3


妻は自慢の女房でした。

いつまでもお洒落をしてきれいでいてくれることが、いちばん大切なことだったのです。


家の中で妻を見ていても満足でしたし、飲みに行ったときは仲間から、

「いつまでも仲がいいね」 と冷やかされては、一層満足していました。


ところが、真冬のある日、寒がりなので、いつも早めに帰ってきていた妻が、夜中になっても帰ってこないことがありました。

俺は、浮気でもしているんじゃないかと気をもんでいました。

※4


そのとき、アパートのドアがけたたましい音を立てて叩かれました。

ビックリした俺は、慌ててドアを開けると、

強面の男が2人、アパートの部屋に入り込んできました。


俺も人相がいい方ではありませんが、明らかにその筋の者とわかる雰囲気の2人でした。


俺は愕然としました。

妻がまさか、280万円の借金をして過ごしているとは思いもしませんでした。


しかも、悪質な業者から借りているらしく、刻々と大変なことになっているらしいのです。

※5


俺は、確かに今までずっとギャンブルで生きてきたような男です。

金がなくて、貧乏のどん底だったこともありますし、

その筋の人に睨まれたこともあります。


でも、一度たりとも犯罪はしてないですし、極道の道に入ったこともありません。


俺なりに真面目に生きてきたつもりでした。

妻も、そうして生きてきたはずだったのです。


確かに、少し前から実入りが悪くなったとは言っていましたが、

借金をしなくては生きられないほど、困らせたつもりはなかったのに。


強面の男たちは、朝になってしまったので、また来るという言葉を残して去っていきました。

すると、どこかで様子をうかがっていたかのように、30分もしないうちに妻が帰ってきました。


「ごめん・・・」

俺が何を言っても、妻は下を向いて謝るだけでした。

俺は、その日、知人に頼みまくって、ほぼ半額の150万円を調達しました。

※6


そして、妻を連れて前夜の男たちのところに持って行きました。

焼け石に水かもしれませんが、業者は意外と親切で、

「来月中だったら、あと150万円で勘弁してやる」 と言ってくれました。


借りたときに妻が助かったのは事実。

暴利であっても感謝をしたい気持ちにもなりました。

帰りがけに、俺は妻に言いました。

「ダメかもしれないけどさ、俺、仕事探してみるよ。平日は働こうかと思って」

※7


「私のせい?

あんたのギャンブラー姿が好きだったのに・・・」

泣き崩れる妻を見て、俺は悲しくなりました。


人生をやり直そうと思っていたのに、こんなことを言われるなんて・・・・。


これから、妻のために働いていけるのだろうかと不安に襲われました。


Yさん・44歳・男性・フリーター

妻:45歳・フリーター



 

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※1

なぜ地道な人生を選ばなかったのか、社会人としての自覚の欠如を感じます。

ギャンブルで大成した人はいません。


※2

似たもの夫婦なので、2人がよければいいとも思えますが、

行き当たりばったりで生きていては、何かがあったら人生全てが破綻してしまいます。


※3

せめてお互いのことに興味を持つぐらいの気持ちがないのだったら、

夫婦でいる意味があるのでしょうか?


※4

ここで気になるのは浮気だけのようですが、

日頃からお互いのことやそれぞれが自分の人生をもっと真剣に考えていればよかったのに・・・。


※5

妻の行動、家計の収支は、いくら信じている、任せてある、といっても、

時々は確認して知っておくべきだったと思います。


※6

どうやって調達したのかが気になりますが、

妻のためと思ったこの行為が妻の更生を遅らせることもあります。

妻には、どうやって調達してくれたのかに興味を持ってほしいのです。


※7

やっと人生の軌道修正ができました。

よほど妻を愛していて、大変な目に遭ったと思ったのでしょう。


【チェックポイント】

ともに生きていくことを選んだときから、間違いは始まっていたと思いますが、

結果的には、まずは夫から、まともな人生に気づいたようなので、

別れないで頑張ってほしいです。


岡野あつこ