※【病気解説一覧】のリンクを記事に最後に貼ってあります。様々な病気や検査について語っておりますので、普段から気になってるものを探していただければ幸いです。
皆さん、ベンゾジアゼピン系って聞いたことありますか?
メタルギアソリッド(最高傑作)っていうゲームをやったことがあれば、もしかしたらご存知かもしれませんね。
狙撃する時に手の震えを止めるジアゼパムって薬が出てくるんです。解説に「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」って記載があります。さすが小島監督。
※出典:KONAMI
確かにジアゼパム(商品名セルシン)は抗不安薬であり、焦りや落ち着かない気持ちを抑えてくれますし、てんかん発作にも使いますから、手の震えも止めてくれるかもしれません。
ただ副作用には眠気があるし、セルシンの効き時間はまあまあ長いですから、戦いの最中に眠ってしまうリスクもあるんで現実の世界で使うかどうかは分かりません。友人にスナイパーもいませんしね。
さて今日はそんなベンゾジアゼピンのお話です。
【ベンゾジアゼピンとは】
※出典:日本生理学会
脳内にはGABA受容体というのがありまして、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体とくっついてます。
GABA受容体が放出するGABAは脳の興奮を抑える主要な抑制性神経伝達物質で、抗不安、催眠、鎮静、抗痙攣、筋弛緩などの効果を発揮します。
ベンゾジアゼピンはベンゾジアゼピン(BZD)受容体を刺激することで、くっついてるGABA受容体をも刺激して、これら効果を発揮するんです。
【ベンゾジアゼピンの種類と使われ方】
・上で述べた通り、抗不安、催眠、鎮静、抗痙攣、筋弛緩などの効果があります。
・長さや強さを調整して、抗不安薬としても、睡眠薬としても使われています。
・抗不安薬としては、セルシン(ジアゼパム)、メイラックス(ロフラゼプ)、ソラナックス(アルプラゾラム)、デパス(エチゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)など。
・睡眠薬としては、マイスリー(ゾルピデム)、アモバン(ゾピクロン)、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、サイレース(フルニトラゼパム)など。
※マイスリーとアモバンは非ベンゾジアゼピンとされており構造的にはベンゾジアゼピンと異なりますが、ベンゾジアゼピン受容体に作用するという点では全く同じです。ただ筋弛緩作用が弱く転倒しにくい利点があります。
※出典:日本医事新報社
※出典:IBIKEN
【睡眠薬としての強さと長さ】
①キレが良くて短時間
・マイスリー(ゾルピデム):入眠に最適ですが、ちょっと気持ちも大きくさせてしまうんで、たまに寝ぼけて喋り続けたりします。また効いてる時間が短いんです途中で起きてしまうこともあります。
・アモバン(ゾピクロン):マイスリーと同じです。ただコイツは苦味が問題ですね。
・ルネスタ(エスゾピクロン):アモバンの改良版で苦味を弱くしたものです。
・ハルシオン(トリアゾラム):キレ味はマイスリーやアモバンに見劣りしますが、メジャーどころで昔からある薬です。寝ぼけて喋ることは少ない筈です。
②強さも長さも中くらい
・レンドルミン(ブロチゾラム):メジャーどころで昔からある薬です。
③強くて長い
・サイレース(フルニトラゼパム):キレ味と長さにおいて内科医が使う最強の一手です。尚、悪名高いロヒプノールは販売中止となりました。中身は同じで完全な風評被害なんですけどね。
④そこそこ強くて長い
・ユーロジン(エスタゾラム):ロヒプノールよりは弱く、それでいてロヒプノールより長く効きます。
⑤めっちゃ長い
・ドラール(クアゼパム):次の日まで残るんであんまり処方しません。確実に8時間以上眠れる環境で使用してもらいます。
※これ以上は精神科の先生にかかる領域です。
【抗不安薬としての強さと長さ】
①キレが良くて短時間
・デパス(エチゾラム):頓服として使った方がいいです。キレがいいぶん依存性が高いのが問題です。自分は頓服最終手段として使います。
・リーゼ(クロチアゼパム):効果は短く強さはありません。安心して使えるんでよく処方します。
②強さは中くらいで短時間
・ソラナックス(アルプラゾラム):頓服的に使うと良いです。それなりのキレ味です。デパスよりは弱いんでよく処方します。
③長く効きます
・セルシン(ジアゼパム)、メイラックス(ロフラゼプ):特にメイラックスは長いです。夜飲んだ方がいいでしょう。
※定期的にメイラックスを使い、それでもダメな時に頓服でリーゼやデパスやソラナックスを使う、というのも良くやる手です。
※また抗不安薬を睡眠薬として使うのもいいでしょう。繰り返しますが同じベンゾジアゼピンですからね。相性のいい薬を使えばいいんです。
ここまで説明してきましたが、ご存知の通りベンゾジアゼピンは今使わない方向へ向かっています。もはや悪者扱いと言っていいでしょう。
その理由は依存性と離脱症状リスクと認知症リスクです。或いはずっと使ってると効果が鈍くなる耐性の問題。やめられなくなっちゃうんですよね。
それと同時に、依存性がなく自然な眠りへ導くと鳴物入りで登場した新しい睡眠薬があります。オレキシン受容体拮抗薬のデエビゴ、ベルソムラです。
ベンゾジアゼピンをやめてこのオレキシン系に切り替えるよう全方向からの圧力が非常に強い。
しかし困ったことにこのオレキシン系が効かないんですよ...。ベンゾジアゼピンから切り替えたほぼ全員の患者さんから「元に戻して」と突き返されてしまっています。初めて睡眠薬を処方するにはもってこいなんですけどね。
要するにベンゾジアゼピンでなければ毎日が暮らせない患者さんがいるのも事実なんです。
また認知症のリスクについては意見が分かれるところでもあります。
「ベンゾジアゼピンが認知症リスクを1.3−1.4倍上昇させる」という報告と「ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスク増加と有意に関係しない」という報告がそれぞれあるんです。
以上より、オレキシン系を試したがどうしても眠れない人という限定ではありますが、自分はこれからもリスクを説明し納得してもらった上でベンゾジアゼピンを処方し続けていく所存です。
当院では過呼吸、極度の興奮や緊張や不安、パニック発作などの場合には、必要に応じて即効性のあるセルシン点滴も行なっています。
※精神科の専門医ではございませんのであくまで緊急避難の対応です。普段の症状制御は専門の先生にお願いしています。
※またベッドには限りがありますので、他により緊急性の高い患者さんがいる場合は実施出来ない場合もあります。ご了承下さい。
今回は以上です。
それでは皆さん、お疲れ様です。
他の病気解説に一覧はこちら。
いつでもCTその日に説明。発熱外来。同日胃カメラ大腸カメラ。生活習慣病外来。各種ワクチン各種健診。オーダーメイドドック。あなたのニーズにお応えします。




