私が10年位前に通っていたアラビア語の学校、
アラブ イスラーム学院の同窓会が開かれた。
この学校ではサウジアラビアのイマーム大学の分校という体で、
アラブ諸国で話されている口語とは違う、
正則アラビア語(フスハ)を学べる。

 この学院は1982年に創立後、
2001年に元麻布の校舎に移転し、
アラビア語教育を行ってきたが、
それ以降2200人の学生が登録し、
349人が卒業したというお知らせが、
学院から送られてきた。



 なんとも感慨深い。私の卒業期は第7期で、卒業生番号は63である。
今、思い返しても、人生であれほど勉強したことはないというほど、
毎日がアラビア語漬けの日々だった。

 一番恐ろしいのは、試験である。
キラーァ(読み方)、キターバ(書き方)、ムハーダサ(会話)、カワーイド(文法)
の4科目があり、そのひとつでも落とすと(10点満点の60点以下)、
学院の壁に赤字で名前が張り出され、落第点の科目が何点だったかも、
赤字で張り出されるのだ。

 それがなんともかっこ悪くて(笑)、天秤座の月には耐えられな~い。
それで必至になって勉強したのだった。
レベルが上がるごとに生徒の数は減っていく、なんとも恐ろしい学校だった。
月~金 毎日4時間、しかも予習&復習をしないとついていけない。
当時の私は、雑誌の連載を7本抱えていたので、
何の因果か、拷問のような日々を過ごした2年半だった。
 本来、ストレートに卒業するのは4期で2年間なのだが、
やはり仕事との両立が難しく、1期は試験を受けずにダブったので、
2年半かかった。



 それでも毎日の学校は楽しかった。
元麻布という場所柄、お昼はときどきみんなで学院を抜け出して、
広尾や麻布十番でランチしたりして・・・。
 もちろん勉強も興味深く、そこは凝り性の蠍座の血が騒ぎ、
まるで写経のように、ノートにアラビア語を書きまくったりしていた(笑)。

 卒業してからは学院から遠ざかっていたが、
今回、初めての同窓会ということで出かけてみた。
学院長の挨拶や、同窓会会長のスピーチ、先生方の紹介の後、
地下にあるホールで盛大な食事会となった。



 アラブ料理の数々が並び、懇親会が始まった。
元クラスメートに声をかけられたが、
井筒俊彦(イスラム学者)の話で盛り上がった。

 私の40代後半は、なぜかアラビア語漬けの日々で、
毎日、泣きそうに切羽詰った状態だったが、
今思い返してみると、その経験があったからこそ、
今、アラビア語を使ってモロッコ取材のコーディネートをやったり、
アラブのハーブの研究などをやることになり、
明らかに世界は広がったのだった。

 

あれは人生の分岐点だったのだと思う。
30代、40代で仕事や人生に悩む人と会うと、
まだまだいろんな可能性があると言ってあげたくなる。
 
 何かを始めるのにもう遅い、ということはない。