私の読書量はお世辞でも多いとは言えない。
ほかの人のブログを見ると、
それこそ毎日1冊・・・という人も結構居て、
すごいなぁ・・・と思う。


私は読むスピードは早いと思うけど、
何せ、じっくりと・・・と言うのができない性質なので、
最後まで読むことなしに放ってある本が、かなりある。
そんな私でも、
何回も読み直している、印象深い作品もある。
これはそんな一冊。

太宰 治
斜陽


「斜陽」は戦後の人々に強いインパクトを与えた問題作。
この作品が、太宰の愛人、
太田静子の日記を下じきにして書かれている事は、
あまりにも有名な事実である。


一言で説明すれば、シングルマザーのお話だ。
今でこそ何の違和感もないが、
当時は「ててなし子を産む」など、とんでもないことだった。
主人公(かず子)は元貴族のお嬢様。
もうじき三十歳になるというのに、かなり幼い。
世間知らずである。
んが、

「私は確信したい!
人間は恋と革命のために生まれてきたのだ!」

と、自分の生きる糧を得るために、
かつて一度だけ会い、
遊び半分でキスをされた作家の男(上原)に、
猛烈なアタックをかける。
男にラブレターを出すのだ。


この手紙が、無邪気というか狙っているというか・・
ワケが分からないのだけど、何故か、ぐっとくる。
男はそんな女に対し、かなり迷惑だったろうに、
「しくじった、惚れた」
とか言いながら、一度だけ女を抱いてやる。
そして、彼女は妊娠するのである。
生まれて初めて心から生きたいと願う女と、
相手になってやろうとする男の優しさ。


「常識がわからない」という彼女は、
世間に対し疑問を持っていることがわかる。
ただ、かず子にとっての革命とは、
「恋しい人の子を生み育てることによる、道徳革命」
なのだ。
だが、「恋しいひと」は、かず子の夫でも何でもない。
上原の子を生むという行為は、全く反道徳的行為なのに。


でも、人間本来のあり方から言えば、
「好きな人の子を生みたい」という願いは、
女性にとって極めて自然なこと。
純粋な欲求であり、原点ともいえる。


純粋性の追求・・・
それは又、太宰自身の理想でもある。


「私はあなたを誇りにしていますし、
また、生まれる子供にも、
あなたを誇りにさせようと思っています。
私生児と、その母。
けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、
太陽のように生きるつもりです。」

と、上原に手紙を書くかず子。
自分を苦行の中に投げ入れ、傷だらけの血まみれになって、
やっと生きているという実感を得る。

何と愚かしく、
そして愛しい生き方なんだろう・・・と、
私は読むたびに、涙してしまう。


弟の直治や母が、「斜陽」のように滅びていくのに対し、
かず子の「太陽のように」という意志は、
太宰の最後の期侍の表れ。
彼はかず子という
「太陽のように」生きる力を残した。

これはまさに、
太宰最後の光といえるだろう・・・。


この後、太宰は「人間失格」を書き、
それが作品としては遺作となる。
(「グッドバイ」は未完なのです。)