スクーター

以前にふれた 、青森出身のノブ・・・
とても思い出深いバイト君だ。


イタリアのモーターサイクルに憧れ
将来、バイクの2サイクルエンジンの研究者を目指し、
志望したのが、京大理学部。
受けるも落ちるを繰り返す。
さすがに4浪目に田舎から、

「このまま浪人生活を続けるなら、仕送りストップする!」

との宣言を受け、諦めて、関西の某私大に入った。



ノブが我が店に来たのは、開店して1年位たった頃、
見習い君やら、他のバイト君やら、パートさんやら、
色々と、出入りの激しい時期だった。


面接に来た瞬間、オヤジさんいわく・・・


「ビビッときた」


風貌は、当時廃れ始めていたポニーテール。
ちょんまげスタイルですね。


更に面接で話すうちに、オヤジさんは

「こいつや」

と確信したらしい。



だって、
京大4浪=変わり者、
両親、親戚公務員=自分と酷似、
極めつけは
青森=「大間のマグロ」。
マグロ取り漁船の漁師になるのが、
オヤジの夢だったのだから。実は。


    大間のまぐろ
    大間のマグロ



運命の出会いだ。



だが問題は、そうは言っても
果たしてきちんと来てくれるかどうか、
続くかどうか、である。
しかしてノブは若いのに、かなりのストイックな性格で、
一日のスケジュールが完全に出来上がっており、
そこにバイトも、きっちりはめ込まれたのだった。


毎回決まった時間に、いつものママチャリで、
いつものジャケットと帽子を被って、やってくるノブ。
何と几帳面な奴なんだ。


が、やがて、そんな規則正しい彼の生活を脅かす
悪魔があらわれた。
オヤジの「まかないタイム」である。


上機嫌のオヤジは、張り切りまくって毎晩、毎晩
アホみたいにアテを作り、飲む。
最高の話し相手もゲットしたし。


だって、ノブのあしらい上手な事といったら。
あのクドイオヤジの話を嫌がらず、
適度に修正しながら絡んでいく。
かつ、彼はいわゆる「雑学」に詳しくて、
話題も次から次へと広がり・・・。
まさに気のいいノブと
「朝まで生宴会」・・・ですよ。


しかし、言うまでもなく、
ノブはれっきとした学生さん。
そして、ストイックな性格故に、授業をサボるなんて事は論外。
蛮行に等しいのだ。
オマケに、せっかくだから受けられる講義は、
学費を払う限り、思いっきり受けようと、
他の学部の授業まで取っていたのだ。



朝いちの授業を寝ずに受ける、という事もしばしば起こり、
見る見るうちに、ノブが睡眠不足に依る疲労に、
襲われている事が見て取れた。



ある日、時間になってもノブが来ない。
こんな時、他の見習い君ならば、
「又かいな、やっぱりな」で終わる所だが、
あの几帳面なノブとなれば、話は違う。


そわそわしていると電話が入った。
ノブだ。

「すみません・・・体調が悪くて・・・」

声がガラガラだ。



オヤジの顔色が変わる。

「えらいこっちゃ!ノブか倒れよった!
熱もかなりあるらしい!オレ行くわ!」


   い、行くって何処!?
   店どうすんねん!!
   ノブん家、分かるのぉ~~~!?



   ・・・・・・



答える事なく、すっ飛んで行ったオヤジさん・・・。
そして、履歴書の住所頼りにマンションを探し、
見事に(?)ノブの下宿先を見つけ出した。
「ちゃんと看病してやったんや」
とオヤジは言うが、
本当の所はわからない。
ただひとつ、言えるのは、ノブにすれば
「居場所もバレてしまった」
・・・と言う事だ。


もはやノブに、強烈なシンパシーを感じているオヤジさん・・・


ノブの受難の日々は、続くのだった。



     * まかないも、見てね! *