ゆえに人は

ふいに足止めを余儀なくされる。



場合によっては

人生そのものが

時を刻むのをやめてしまうことさえ。



私にとってそれは

ある男によって

もたらされたものだった。







ー2002年秋

朝からまるで真冬のように

肌寒い曇り空の一日だった。



街の雑踏が

ほんの少し呼吸をとめた

つかの間の静寂の中

私たちは出会った。



形崩れしたラベンダー色のセーターに

星の数ほどの毛玉を身にまとい

男は唐突にあらわれた。
 


木枯らしに毛玉はゆれ

その目は赤く涙でうるんでいた。

その毛玉には理由があり。

その毛玉には声があった。



ふたりはいくつかの季節を感じ

いくつかの痛みをわかちあった。



ーそして私たちには

ディルのかおりに包まれた

何度かの甘くて苦い週末があった。