これまで演奏会で月光ソナタを聴いた回数を数えてみた。
記憶になかったものまで含めると、なんと4回もあった
誰もが知る有名曲なので、プログラムに入れやすいのでしょうか🌛
4月に及川浩治さんの月光を聴いたばかりだったが、いざ自分が弾いてみるとあらためてプロの演奏が聴いてみたくなるのが人情というもの。
検索してヒットしたのが、韓国人ピアニスト、イ・ヒョクさんのリサイタルだった🎹
イ・ヒョクさんは、16歳の史上最年少でパデレフスキ国際ピアノコンクールで優勝。2018年には浜松国際ピアノコンクールで第3位入賞。
ショパンを深く敬愛しており、若いピアニストのためのモスクワ国際ショパンコンクール(2012)で第1位およびコンチェルト賞を受賞したほか、2021年に行われた第18回ショパン国際ピアノコンクールではファイナリストに選出された。
そして、2022年のロン・ティボー国際コンクールでは、あの亀井聖矢さんと並んで優勝したという華々しい経歴の持ち主である。
リサイタルはカワイ主催で、東京、大阪、九州などで開催されるようだ。
ちなみにイ・ヒョクさんはショパンコンクールでシゲルカワイを弾いたらしい🎹
カワイ表参道の公演はすでに完売だったため、大宮のカワイまで足を伸ばしました🚃
開場時間に合わせて到着すると、すでに店舗の前にはお客さんの列が。
会場となるホールは、50人も入れば一杯になるような小サロンといった趣だ。
どこに座ろうか迷ったが、顔がよく見える最前列に座ることにした。
この日のプログラムはこちら
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.2-1
ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調「月光」Op.27-2
* * *
モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K. 397
リスト:ハンガリー狂詩曲 第12番 S.244/12 嬰ハ短調
シューマン:交響的練習曲 Op.13
会場にアナウンスが流れ照明が落とされると、にっこにこの笑顔でイ・ヒョクさんが登場。
なんという可愛いらしさだろう、この時点ですでに心を鷲掴みにされる
細身の身体に、細いストライプのシャツと清潔感漂う明るい紺色のスーツがよく似合う。
拍手に応えて一礼し、椅子に座った後、気持を落ち着かせるようにしばし目を瞑るイ・ヒョクさん。
しばらくの沈黙の後、演奏が始まった。
小気味良く端正なリズムと芯のある音色。
そして、大らかで伸びやかなカンタービレ。
演奏中の表情は笑顔から一転、厳格な雰囲気が漂い、それがまた素敵
1曲目の演奏が終わり、次はお待ちかねの月光だ。
第1楽章の1音目が鳴るまでの間、私が弾くわけでもないのになぜかドキドキしてしまう
目を瞑りしばらくした後、静かに序奏が始まった。
まるで霞がかったような、幻想的なピアニッシモの世界が目前に広がる。
これまで、それこそ幾人ものピアニストが弾くこの1楽章を聴いてきたが、イ・ヒョクさんのダイナミクスを抑えた演奏は、まるでバックハウスが目の前で弾いているようで胸が熱くなる。
弱冠24歳にして、往年のヴィルトゥオーゾの風格が漂っている。
第2楽章も低音が効いていて、私好みの演奏だ。
そして第3楽章。
あくまで品格と端正さを失わず、音楽が疾走するようだった。
休憩を挟み、2部はモーツァルトの幻想曲で幕を開ける。
どうしてこんな曲が書けるのだろう、やはりモーツァルトは天才だ。
そして、私はモーツァルトが好き
リストのハンガリー狂詩曲は、イ・ヒョクくん(心の中ではすでに「ヒョクくん」呼び)のヴィルトゥオーゾ性が発揮され、演奏が終わると小さなホールにブラボー
の声がこだまする。
最後はシューマンの交響的練習曲。
ピアノという楽器のポテンシャルをすべて引き出すかのような深い響き…
タイトルのとおり、まるでひとりオーケストラのような演奏だ。
ヒョクくん、頬に汗を光らせながらの大熱演でした
すべてのプログラムが終了後も万雷の拍手は鳴り止まず、にっこにこの笑顔でそれを受けとめるヒョクくん
「ありがとうございます。スカルラッティのソナタを弾きます」と口にし、おもむろに椅子に座り直した。
天上のようなスカルラッティの音楽と、天使のようなヒョクくんの演奏。
幸せだなぁ~
アンコールを弾き終えた後も拍手は止まず、ヒョクくん「ショパン」と一言。
会場から「きゃー」と歓声がわく。
エチュードOp.10ー4を弾き始めた。
この時点で、おかめの興奮も頂点に達する。
「目の前にいるのはリヒテルか?」と夢みたくなるような演奏だった。
それでも止まぬ拍手に「ジャパニーズコンポーザーの作品を」と前置きし、再びピアノに向かうヒョクくん。
このような現代曲も弾きこなすんだと、その深い芸術性に感嘆する。
まだまだこれで終わりません。
ショパンの木枯しのエチュードの後、最後はリストの超絶技巧練習曲を弾くヒョクくん。
お客さん全員がスタンディングオベーションするという興奮の坩堝の中、リサイタルが終了する。
もう、そのサービス精神には恐れ入るばかり
こんなピアニスト、これまで見たことがありません
結局、この日のアンコールは全部で5曲
コンサートが終わり興奮覚めやらぬ中、帰りの支度をしていると、ホールの外から歓声が聞こえる。
なんと、ヒョクくんがお見送りに出ているではないか
写真オッケーとのことで、みんなでバチバチ撮影タイム📸
途中、カワイの方が気をきかせて「ピアノの前に移動しましょう」と、店舗のシゲルカワイの前でポーズを取るヒョクくん🎹
ファンと思しき方の「サランヘ(愛してる)」なんて言葉も飛び出し、プレゼントを渡す方もいらっしゃいました🎁
私も今日の感動をなんとか伝えたいと、勇気を出して「ノムノムチョアッソヨ ペニトェオッソヨ(あまりに素晴らしくてファンになりました)」と、片言の韓国語で声を掛けることができました
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