小澤征爾さんの訃報に触れて以降、ネットに流れる記事をいくつか読んだ。
その中で、過去の新聞に掲載されたこんな記事を見つけた。
書いたのは、毎日新聞記者で桐朋学園大学学長も務めた梅津時比古さん。
記事以外にも梅津さんの著書が読んでみたくなり、地元の図書館検索システムで探したら、ありました📚
まだ数ページしか読んでいないけど、冒頭から惹き込まれる。
宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」は、たしか小学校の国語の授業で習ったはずだが、まったく内容を覚えていない。
賢治の作品では「よだかの星」の衝撃的なラストが幼心に強く印象に残っている。
「セロ弾きのゴーシュ」は、ゴーシュたちが『第六交響曲』を練習している場面から始まる。
トランペットは一生けん命歌ってゐます。
ヴァイオリンも二いろ風のやうに鳴ってゐます。
クラリネットもボーボーとそれに手伝ってゐます。
梅津さんはゴーシュたちが練習する『第六交響曲』について、多くの読者はベートーヴェンの交響曲第6番『田園』を想い浮かべるのではないかと書く。
交響曲第6番で知られたものでは、ほかにチャイコフスキーの『悲愴』が考えられる。
そして賢治は、『田園』も『悲愴』もレコードを所有していたという。
しかし、『悲愴』の場合、沈鬱なイメージが、賢治が書くトランペットやヴァイオリンの描写には感じられないとし、梅津さんは「まず、『悲愴』にまで考えを及ばせる必要はないだろう」としている。
賢治もチェロが弾けたことは、梅津さんの本を読むまで知らなかった。
レコードをむさぼるように聴いていたという賢治は、自作の詩の朗読に伴奏の音楽を付けることを考え、やがて自ら楽器を演奏することを思い立ったという。
手を染めたのはオルガンとチェロで、賢治が購入したチェロは当時の価格表で170円となっているという。
「街の食堂のカツレツが5銭、高級なカニ缶が90銭であった当時としては、かなり贅沢なものであったことには違いない」と梅津さんは書く。
下世話な私は、現在のカニ缶の値段をネットで調べてみた。
マルハニチロのカニ缶が1個730円。
単純計算しても、賢治は現在の価格で10万円以上するチェロを購入したことになる🎻
梅津さんの著書を読んでいたら、あらためて賢治の「セロ弾きのゴーシュ」が読みたくなってきた📚