予報どおり雪が降りましたね⛄

 

降り積もる雪も何のその、昨日はエマニュエル・シュトロッセさんのリサイタルで足を運んだ地元近くのホールへ、こちらを聴きに行ってまいりました。

 

 

ホールのピアノを32年ぶりに入れ替えたということで、福間洸太朗さんによる新スタインウェイピアノのお披露目公演だったのだ(実は1月のシュトロッセさんのリサイタルが実質的なお披露目だったのだが)。

 

2度目のこのホール。

やっぱりまた来てもいいホールだなラブラブ

 

ロビーでは、福間さんが地元のローカルテレビに出演した時の映像が流れていた。

 

 

会場を見渡すと高齢者が多い印象は否めないが、おそらくピアノを習う親子連れの姿もちらほら。お隣には私と同年代くらいの女性が一人で聴きに来ている。

 

会場が暗くなり、ステージだけ明るくなる。

すると、福間さんではなく、知らないおじさんがステージに出てきて拍子抜けする。ホールがある市の市長だという。

 

市長による新ピアノお披露目のあいさつが終わり、今度こそ福間さんの登場だ。

 

TVで観るとおり、貴公子という言葉がぴったりのお姿。

福間さんはホールがある市の出身で、親善大使もつとめているそう。

今回、新しいピアノを入れるに当たり、福間さんが選定に立ち会われたそうだ。

「長い目で見て、このピアノがいちばんポテンシャルが高いと思って選んだ」と話していた。

 

一曲目は、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク。

なんと、福間さんが編曲したという。

大好きなアイネクライネがピアノで聴けるなんてラブ

 

当日のプログラムはこちら↓

 

演奏が始まる。なんて華やかなアイネクライネだろう。所々、福間さんオリジナルのトリルや装飾音が入る。

まるで、一人弦楽四重奏のような重層的な音色に、ピアノの演奏がオーケストラに例えられるのがよく分かる。

こんな素敵なアイネクライネに仕上げてくれて、モーツァルトも草葉の陰で喜んでいるかな?昇天

 

アイネクライネを弾き終えた後、福間さんがマイクを取り、次の曲のシューマンとブラームスについて解説してくれた。

 

昨年はシューマンとブラームスとの縁が深かったそうで、シューマンが晩年を過ごしたシューマンハウスでは、自筆譜などを見て過ごしたという。

「今の私のシューマンとブラームスへの愛が感じられると思うので、ここは聴きどころです」と、あたたかな人柄がうかがえるユーモアあふれたトークで会場をなごませる。

 

シューマンは子供の情景、幻想小曲集から3曲、ブラームスは福間さんの思い入れが感じられる演奏だった。

 

休憩を挟み、ここからはロシアの作曲家による曲へ。

昨年生誕150年だったというスクリャービンと、今年生誕150年を迎えたラフマニノフのプログラムだ。

 

福間さん、この2人の曲について面白い表現をしていた。

スクリャービンは音が上に向かうような飛翔するイメージ、一方ラフマニノフは下に沈み込むような土臭い強さがあるそう。

 

そして、これから弾く前奏曲《鐘》のモチーフが、最後に弾く前奏曲第13番にも用いられていると、実際にピアノを弾きながら説明する。

 

とても分かりやすく曲への慈しみが感じられる解説で、福間さんの話をうんうんうなずきながら聞いていると、隣の女性も同じく首を縦に動かしている。

おそらく福間さんのファンなのだろう。前から9列目の、そこそこお顔の見える席だったが、しょっちゅうオペラグラスを取り出しては、福間さんの手元なのかお顔を確認していた。

 

そして、スクリャービンの曲に『ワインに酔いしれて』『火山』という副題を福間さんが付けたという。

ベートーヴェンの『月光』や『悲愴』も、のちの人が付けたタイトルであり、「ただ嬰ヘ長調というより、曲のイメージが湧くのならそれはいいことなのでは」と話していた。

 

後半の圧巻はやはり、《鐘》だった。

以前、TVで實川風さんの演奏を聴いたことがあるが、その重厚かつ迫力ある演奏に圧倒されたものだ。

しかし、生で聴く鐘は、それはそれは凄かった。もう、これ以上ボキャブラリーが見つからないくらい凄かった。

 

何が凄いって、まず音のボリュームだ。

ホール中が地鳴りをあげるような重低音。

一見細身の福間さんだが、こんなに音が鳴るとは。ピアノの正式名称がピアノフォルテであるゆえんが理解できる。

女性的というか柔らかい印象の福間さんだが、やっぱり男性なんだなということを実感できる演奏だった。

 

万雷の拍手の中、アンコールで弾いたのは、バッハの羊は安らかに草を食み BWV.208。

初めて聴いたが、なんて愛らしく、そして美しい曲なのだろう。心が浄化されるようだった。

 

そして、一度は舞台袖に退いた後、再びステージに現れた福間さん。

なんと、自身で編曲したシャンソンメドレーを最後に弾きますとピアノに向かう。

 

分かるだけでも、恋は水色、ラヴィアンローズ、パダムパダム、枯葉などの曲が次々と演奏される。

 

そして驚いたのが、右手でラヴィアンローズを弾きながら、左手でマイウェイの旋律を弾いている。

福間さん、ひょっとして天才ですか!?

 

つかの間、ホールはまるで大きなピアノバーに早変わり赤ワイン

よくBGMで流れている演奏と違って、ど迫力のシャンソンだ。

 

メドレーのラストを飾るのは、やっぱりあの曲。

 

愛の賛歌赤薔薇

実はこの曲、おかめの涙腺崩壊ソングなのだ。

 

エンディングに向かって、これでもかと盛り上がる演奏に、涙と震えが止まらない。

椅子に深く体を沈み込ませ、隣の人に泣いているのがばれないよう必死なおかめなのであった。

 

最後は、若き日のブーニンなどがよくやっていた、体をのけぞらせての決めポーズルンルン

 

先日読んだ稲垣さんの本に「ピアノが上手いかどうかなんてことは、あまりにもちっぽけなこと。実は選曲が9割なのかもしれない」と書いていたが、その言葉を実感する。

 

当然、福間さんはピアノが上手だが、それより何より演奏に情熱がほとばしっていた。そして、シャンソンの持つ力に圧倒された。

 

私もこんな曲が弾けたらいいな。

物販スペースで福間さんのシャンソンの楽譜も売ってたから買えば良かったな。

 

今宵、福間さんの素敵なお人柄とピアノにすっかり魅せられたおかめなのでしたラブラブ

 

よろしければ、福間さん編曲によるピアノのためのシャンソンメドレーをお聴きください🎹