高校3年の卒業間近のこと。


当時、僕は高校が嫌いでした。
 

 

高校生活は狭くて深い友人関係。学校に居場所がないような気持ちで過ごしていました。


そんな海水の中で育てられた淡水魚みたいな青春の中、クラスの爽やかな男子の数人が言いました。


『思い出に、みんなで遊び行こう!』


(は! 何を今更。どうせ俺、クラスでペアが見つからなくて『岡田くんが余りましたー!』って言われるタイプだから!)


そんな僕の気持ちを他所に、クラスの男子は言いました。
 

 

『このクラスの男子だけで、TDL行こうぜ!』

 

高校生活最後の思い出に、TDLに行こうと言うのです。

 

 

岡田、ちょっと心が動きます。
 

 

(あれ? TDL? うまく思い出せないけど、何だか僕の体が行きたがってるゾ?)


結局僕も参加しました。

 

当日。

 

 

参加したのはクラスの男子10人程。
 

 

みんなで東京ナントカリゾートに入場しました。


中央に見えるはツンデレラ城。
 

 

普段0時までに絶対に家に帰るツンツンだけど、王子と2人の時はデレデレする女性が住む城です。

 

その奥には大雷山。
 

 

ビックでサンダーな山型のジェットコースターです。
 

 

血気盛んな男子が集まれば、当然そういった刺激的な乗り物に乗る空気になります。
 

 

しかし1人の男子が言いました。
 

 

『俺乗らない』
 

 

その彼、イッチーは図書館のようなゲーム所持数で有名でした。

 

 

眼鏡をかけていて、一度見たらどんなに絵に自信が無い人でも的を突いた似顔絵が描ける感じのクラスメイトでした。

 

 

困った事に、乗りたくないのは彼だけ。
 

 

せっかくの思い出作り。
 

 

『恐いから乗らない』
 

 

(本当に恐いのは、空気を読まないお前の未来だぞ?)

 

 

街に出れば平気で毒を吐く岡田も、クラスメイトには二酸化炭素しか吐けません。


結局1人にするのはどうかと思った僕は、


「じゃっ、じゃあ俺も残るよ! アレ何回も乗った事ある気がするから!」


空気を読んだ岡田、まさにエアマックス! エア冗談!


『お、じゃあよろしくな!』

 

(意外とあっさりだな……)

 

僕とイッチーは、みんなを待ってる間ショッピングすることに。


イッチーがホットドッグを買ってる間、店の周りで待っていた僕。
 

 

すると1人の男性に目が留まります。


(SMAッ……くしゃなぎくん?)


草薙くんです! 草薙くんが電話してます!


「おーおー! やべーぞイッチー! あれ! 草薙くんだよ!」
 

 

しかしイッチーはホットドッグをハムハムしながら言いました。


『違うよ、んな訳ねぇじゃん』


(コイツ、人がビッグサンダー我慢してお前と付き合ってんのに、夢の国で夢の欠片も無い発言しやがった!)


一番むかつくのは、高校卒業旅行はこの思い出しか覚えてないことです。

 

 

おしまい