18歳の冬。


『いいバイトがあるよ!』


僕は親友のコウちゃんに誘われ、当時仲の良かったヨシキくんという後輩と、その話にのこのこ飛び付きました。
 

 

何でも携帯電話の組み立てだそうです。


ヨシキくんはタイキくんという僕の友達の弟で、当時17歳で福島県から上京していました。
 

 

名前が増えるとややこしいですよね。これが理解できれば、あなたはボノボを越えられます。


バイト当日。


そのバイトは夜勤でした。

 

 

夜11時から朝5時まで、小さな工場で当時のJ-PH●Nの最新機種の携帯電話を組み立てる作業です。

 

 

携帯の組み立てつったって、手作業のみのボノボでもできる簡単な作業です。
 

 

ガンプラを想像して頂ければ80%くらい合ってます。
 

 

それを座りながらやるわけです。
 

 

これで日当1万越え。18歳男児にはかなり割のいいバイトでした。
 

 

(こいつは楽チンだ!)


パチッ パチッ

 

部屋ではただただプラスチックをはめる音が鳴り響きます。

 

パチッ

 


パチッ


パキッ

(あ)



なかなかはまらない部品に、僕の指先は界王拳を使ってしまいました。


さりげなく破滅の音。


まだ誰も気づいていません。

 

(ま、いっか!)


しばらく作業をしていると、監視していた社員の人が突然。


『組み立てた部品が濡れてる! みんな手見せて!』


恐らく誰かの手汗です。

 


しかし全員避妊具みたいなビニール手袋をつけています。


(ッたく、誰だよ! 迷惑な奴だ!)


全員が手を見せる中、社員が1人の人間の前で止まりました。


『君だ!』

 

(俺だ☆)


僕は避妊具を突き破る程の手汗をかいてました。
 

 

携帯電話が妊娠することはありませんでしたが、おかげで若干怒られて、手袋2重の刑でした。


それから数時間後。


(あー、マジ暇)


岡田は単純作業で退屈でした。


(大体なんだよ、この携帯。俺DOC●MOだから関係ねぇよ)


そう思いながらも仕事は終わり、僕はヨシキくんと帰りました。


「バイト代入ったら何に使う?」
 

 

と訊く岡田に、


『に、肉食いたいっス!』
 

 

と答えるヨシキくん。


後日バイト代が入った2人はファミレスでステーキを食べました。


「やっぱ肉はうまいなぁ!」

 

『う、うまいっスね!』


2人の食い様はボノボ(霊長類で人間の次に頭のいい猿)の様でした。

 

 

おしまい