23歳くらいのある冬。

 

 

当時ケンケンとSちゃんは付き合ってました。
 

 

2人とも僕にとっても大切な友達です。


しかし問題が起こりました。

 

 

どうやらSちゃんが浮気をしている模様。

 


ケンケンが気付き始めた頃には、ケンケンの電話やメールに答えなくなったSちゃん。
 

 

普段温厚なケンケンもキレました。

 

 

あんなにキレたケンケンを見るのは、これを含めて2回だけでした。別の1回は僕が怒らせた感じです。

 

 

冬のある夜。キレたケンケンはSちゃんの家へ。

 

 

なぜか僕も一緒に。
 

 

しかし家にSちゃんはいません。
 

 

しかも駐車場にあるはずのSちゃんの車の代わりに、千葉ナンバーの見知らぬ車が停まっています


岡田ピンッときました。
 

 

(そいやあの子、こないだスキー行って千葉の男にナンパされたって言ってたな。)
 

 

怪しさが一票になるなら都知事にもなれるほど怪しいSちゃん。
 

 

深夜1時の住宅街、僕とケンケンは駐車場で張り込む事にしました。


早朝5時。
 

 

『あれじゃね?』

 

 

Sちゃんの車が帰ってきました。

 

 

車の中には彼女と見知らぬ男性。
 

 

同時に自分の車を飛び出すケンケン。
 

 

寝呆けた僕もすぐに行きました。

 

 

(男の指の臭い嗅いでやる!)
 

 

浮気の証拠を掴む為に、アホな判別方法を試そうとしてました。
 

 

しかし、ケンケンは男をすぐに帰らせました。

 

待ちに待った修羅場ですが、ケンケンは僕に信じられないことを言いました。
 

 

『岡田ごめん、ちょっと2人で話させて』


えぇ!? 5時間以上付き合ったのに修羅場見せてくんないの!?


とは思いましたが、仕方無く待ちました。

 

 

30分後。

 

 

テンパったケンケンが僕の所に駆け込んできました。
 

 

『あいつ過呼吸起こした! どうしたらいい!?』
 

 

僕はすぐに車にあったビニール袋を持っていき、彼女に吸わせました。


「おい! しっかりしろ!」
 

 

(ごめん! その袋、本当はゴミ袋として使ってたやつなんだ!)
 

 

※当時はペーパーバック法が主流でSちゃんはこれが落ち着くようでした。現在はネットなどでちゃんと調べてください。

 

 

彼女が落ち着くと、僕はケンケンに聞きました。


「言いたい事言えたの?」

 

『いや、なんか責めようかと思ったら逆に責められたっつうか』


要するに口喧嘩に負けたようです。
 

 

挙げ句、過呼吸を起こされて、浮気はうやむやです。


ケンケンは続けて信じられないことを僕に言いました。
 

 

『てか本当悪いんだけどさ、話長くなりそうだから岡田、帰ってくんね?』


は?


『こっから電車でいくらだっけ? これで足りる?』


そう言ってケンケンは、彼女の浮気調査の為に一緒に5時間待った僕に500円玉を渡しました。
 

 

時給100円です。

 

 

(なんて安い給料なんだ)


結局帰された岡田。
 

 

岡田出番無しです。
 

 

僕は500円玉を握り締め、早朝の住宅街を歩いてました。
 

 

もちろん迷いました。
 

 

駅が見つからずに、犬と散歩しているおじいさんに道を尋ねました。


「すみません……」

 

 

駅とまともな友達、どこですか?

 

 

おしまい