その夜から週末は小倉でひたすらナンパしました。

 

 

中途半端に方言を覚えたところでたかが知れてるので、とにかく岡田六法ナンパ全書を練り直しました。
 

 

講義中も頭の中は、いかにして福岡の夜の女性達にどれだけウケるか、何が受けるか、何を求めてるか、真剣に考えました。

 

 

それはもう、将太の寿司の将太が、新作の寿司を考えるよりも考えました。
 

 

(……そうか! 夜フラフラ歩いているナンパ待ちの子は未成年で、車でナンパ待ちをしてる子は社会人なんだ!)
 

 

その後の人生で一切何の役にも立たない事なのに、新たな発見をする度に漫画にして描く岡田。

 

 

脳細胞の無駄遣いです。
 

 

とはいえ、全ては小倉の夜で1等賞を取る為。
 

 

これだけ勉強を本気で頑張ってれば、たぶん山口県の大学に通わずに済み、立派な寿司職人になれました。

 



嫌がる友人に無理言って車を出してもらい、週末は研究の成果を試しに小倉へ。

 

 

そんな生活をして数ヵ月が経ちました。


──週末の夜の小倉。
 

 

1台の軽自動車に行列をなす車たち。
 

 

僕が乗っていた車の順番が来ました。

 

 

助手席の僕が、運転席側の女性に話し掛けます。


「あ、手品しまーす」


もう芸人です。

 

 

しかし、わりと受け入れられる様になりました。


挙げ句の果てには、車相手には車でナンパする常識を突き破り、車が並ぶ中、体1つでナンパしました。


「え? 俺の車見えないの?」
 

 

ついでに将来も見えそうにありません。


そんなある夜
 

 

『あははっ、今までナンパしてきた男ん中で1番おもろいわぁ☆』


やった! ついに、ついに言わせたぞ! しかもちっちゃくてピクルスみたいにカワイイ子だ!
 

 

「マジ? じゃあ連絡先教えてよ」


『教えたいけど、彼氏おるんよ』


「んだよ……じゃあ何でこんな所にいんだ?」


『ここにいたら色んな男がナンパしてくるやん? おもろいから暇つぶしにはちょうどいいんよねー』


(なるほど。だからみんなここに集まるのか……)
 

 

ふと冷める岡田。


その夜、続けてまた遺伝子操作したスイカみたいな女性をナンパしようとした時。

 

 

現地人の同乗者に言われました。


『こりゃあかんわぁ、他行こや』


は? この程度の栽培マンで?


この時気付きました。
 

 

こじれた僕はナンパそのものが好きでした。

 

 

しかし普通、盛りのついたウッキーなメンズは、よりキレイな女性との出会いの為にナンパしてるんです。

 

 

(この程度の栽培マンでギブアップか……俺の地元の奴らなら喜んで自爆するのにな……)
 

 

ふと、地元の悪友が恋しくなりました。

 

 

それから、自然に小倉には行かなくなり、大学生活でナンパをしなくなりました。


まぁ地元帰る度にしてたんですけどね。

 

『こないだすげぇ魔人ブスと遊んでさぁ!』


「あはは! マジ? じゃあ全員呼んで天下一武道会(合コン)しようぜ!」


やっぱ地元の友達が1番です。

 

 

おしまい