僕もう「俺、酒強いから!」なんて言いません。

 

 

つうか言えません。

 

 

ある晩女友達と飲みに行きました。

 

彼女は無類のお酒好き。
 

 

好きなお酒は『ビール』。

 


好きな男性のタイプは『酒豪』。
 

 

好きな食べ物は『枝豆』。
 

 

趣味は『晩酌』。
 

 

得意料理は『つまみ』。
 

 

あまりにも酒が好きで、彼女と話してるだけでビールが飲みたくなる程です。
 

 

ちなみに滝川クリステルに似てます。
 

 

僕は当時、高橋克典さんに笑顔が2ミリくらい似てるって言われてました。
 

 

その晩、高橋とクリステルはとにかくビールを飲み続けました。
 

 

後にレシートを見てみると、2人で中生を6杯、ピッチャーを1杯空けてます。
 

 

これでまず1軒目です。
 

 

2軒目でもウーロン杯を挟んで、中生を2人で6杯飲んでます。
 

 

(何者だ!? この女!? 一向に酔わねぇ!)

 

 

20代前半の若さと健康のありがたみを知らなかった学生時代。

 

 

あの全盛期の肝臓の元気さは無いものの、故郷の村では1・2位を争う酒豪の高橋に限界が近づいてました。

 

 

しかしクリステルは「うふふ」とほろ酔い気分でまったく潰れる気配がありません。

 

 

それどころか綺麗でほっそりした足首に出来た、もの凄い水膨れ(火傷)を見せて「ほらこれすごくない!?」と謎の自慢話を始めました。

 

 

あわよくば酔った勢いで本物の高橋に見えて好きになってもらえないかなと淡い期待を抱ていましたが、もうここからは自尊心との戦いです。

 

 

戦いの場は3軒目、日高屋へ。
 

 

餃子と枝豆とやっぱりビール。

 

 

ここで僕はビールと、さらにレモンサワーを頼みました。

 

 

それがいけなかった。

 

 

きっとお腹の中でサワーと麒麟がケンカを始めたんです。

 

 

クリステルが足首の水膨れを自慢する中、高橋は猛烈に気持ち悪くなっていました。
 

 

高橋は一種類のお酒で統一しないと駄目なのを忘れてたのです。

 

 

ちゃんぽん超苦手だったのです。
 

 

こうして3軒目でクリステルと高橋は別れました。

 

 

高橋臨界突破。
 

 

クリステルホロ酔い。

 

 

特命係長ボロ負けです。

 

 

たぶん絶好調でウンコの力とか飲むなど、どんなに賢い飲み方をしても、彼女には負けてました。

 

 

多分、酒の女神か何かです。

 

 

しかし本当の特命はそこからでした。

 

 

電車の中で気持ち悪くなり、ひと駅ごとで降り続け、1時間弱の家路が4時間かかりました。
 

 

ほとんど覚えてないけど多分 武蔵野線各駅ほぼ降りました。

 

 

降りる度に汚い花火を打ち下ろしました。

 

 

嘔吐して体力を吐き続ける中、生まれて初めて鼻からも出ました。

 

 

酩酊した高橋は思いました。

 

 

(あはは。あぁ。やっぱ鼻と口って繋がってんだ……)
 

 

最寄り駅直前で終電打ち止め。

 

 

久しぶりにタクシーで帰宅。

 

 

僕は初めて女性相手にお酒で負けました。

 

 

死ぬ程くやしかった上に、好きな人ができたという理由で疎遠に。
 

 

ヤリ逃げするどころか勝ち逃げされました。
 

 

それからおよそ10年、僕は仕事のクォリティを上げたいという意識高い系の理由で現在禁酒するようになりました。

 

 

クリステルとはこの夜一度きりの宴会で二度と会うことはありませんでした。

 

 

別に会いたくないし顔忘れちゃったけどあの水風船みたいな足首の火傷だけは忘れられません。

 

 

とりあえず酒税が高くなればいいのにと思いながら振り返りました。

 

 

またね!

 

 

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4400レビューで4.9評価を得た、王者の物語。

 

(少年と老婆:幻冬舎)