中三の頃。

 

 

ぶっちぎりの不良だった僕は、老け顔を利用してレンタルビデオ屋でアグレッシブビデオを借りました。

 

 

夜中の田舎道。

 

 

(俺は禁断の果実をレンタルした!)
 

 

1秒でも早く家に着いて、このアグレッシブビデオが見たい!
 

 

見てウィンナースポーツがしたい!
 

 

もち単身競技!
 

 

そんな思いを胸と股間に秘め、自転車を全速力でこいでました。
 

 

高速に回転するペダル!
 

 

高鳴る鼓動!
 

 

上がるスピード!
 

 

俺は走れエロス!
 

 

急カーブをドリふ


車にはねられました。


俺、横転。


散らばるアグレッシブとダミーで借りたハリウッド超大作。
 

 

車のタイヤに巻き込まれてる自転車。いたる所がひん曲がってます。


運転手のおっさんは急いで僕の所へかけ寄って来ます。


『き、君だいじょぶか!? 救急車呼ぶから!』


僕はこの時、未成年のくせにアグレッシブビデオを借りたやましい気持ちと、車にひかれたとはいえ、人様に迷惑をかけた意識で一杯でした。
 

 

どすけべなくせに小心者という日本人の典型な中三です。


「ご、ごめんなさい、だいじょぶです、ごめんなさい」

 

そう言いながら僕はビデオを拾い集め、半壊した自転車に乗ってその場を逃げる様に後にしました。

 


多分アノレダリンだかアノネダーリンだか何だかの作用で、痛みはあまり感じてません。
 

 

心配そうに見送る運転手と後列の車に乗っていた野次馬達。


親には「田んぼに落ちた」とか適当な事を言いました。

 


自転車は修復不能でしたが、僕はかすり傷と軽い捻挫で全治2週間でした。
 

 

正義超人である僕だからこそ無事でしたが、凡人と悪魔超人は即死だったはずです。


このお話で一番言いたい事は、交通安全についてでも僕が頑丈ドエロである事でも、今電車で目の前にいる汚いおっさんが競馬新聞を読みながらなぜかトマトジュースを飲んでる事でもありません。

 

 

僕はレンタルビデオ屋さんが大好きです。
 

 

大学時代は3ヵ月程、最寄りのレンタル屋の会員カードの期限が切れたのをきっかけに、あえてレンタルを我慢していましたが、とうとう更新したときは興奮で震えました。
 

 

これでハリウッドもワーナーもソフトオンデマンドも借り放題です。
 

 

たかがDVDとCDがレンタルできるというだけで、好きな子と付き合えるテンションで喜んでいました。
 

 

実際日本全国の男性の7割の心と股間の彼女はレンタル屋さんにいると思います。
 

 

時代は移り変わり、もうVHSの時代は終わり、DVDになったと思えばブルーレイやHuluやネットフリックスといったビデオオンデマンドの時代になりました。

 

 

当時の僕に教えてやりたいです。

 

 

「家にいても見放題だよ、けど子ども生まれると映画なんて観る時間ないから、今のうちたくさん見とけ」と。

 

 

少なくてもアグレッシブビデオを借りて車に轢かれる中学生はいなくなると思うので、本当に良い時代だなと思います。

 

 

おしまい。

 

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