高校生の頃。
 

 

夕方の繁華街を制服で友人とぷらぷらしてました。
 

 

その友人はまったく仲良くないけど、後にメンズエッグという雑誌に載るくらいのイケメン。
 

 

2人でベンチに座っていると、見知らぬおばさんに話かけられました。
 

 

逆ナンです。
 

 

おばさんはパッと見、普通の品のいいマダムでしたが、どうやらべらぼうに酔っぱらっているご様子。



「あんた、だっらしない感じするわねぇ」
 

 

言われたのは僕。


「こっちの子なんか、ビシッとしててかっこいいじゃないの」
 

 

言われたのは友人。
 

 

夕方5時からベロベロに酔っぱらって高校生に絡んでるマダムに
 

 

「だらしない」
 

 

言われました。
 

 

宇宙で唯一だらしないキャラを確立し、誰よりも自覚しています。

 

 

もしもみんなの「だらしない」が一票になるのなら、今ごろ僕は大統領にでもなってドナルド・トランプに向かってロシア語で「このハゲーーー!」って言ってます。

 

 

でも本当はショックでした。


こう見えても電車では老人や妊婦、体が不自由な人にもっぱら席を譲ります。あとごめん見えてないか。
 

 

今の日本には心が不自由な人が多いと思います。


そして大学生の頃。

 

 

いつものように、自転車で音楽を聞きながらノリノリで大学に向かってました。
 

 

すると10メートルほど前を歩いている老婆が突然ぶっ倒れました。
 

 

驚きながらも、ダッシュで近づきました。



「おばぁちゃん! どしたの!?」


近づいてすぐに分かりました。
 

 

(うぅわ! 超酒臭ッ!)

 


そのおばぁちゃんはアルコールに漬けた梅干しの様な臭いと見た目でした。
 

 

しかし一刻も早くおばぁちゃんを介抱しなければいけません。


「おばぁちゃん、家分かる!? 自分家!」


おばぁちゃんを抱えながら、おばぁちゃんの震える指先にあるマンションへ。
 

 

どうやら親戚の家に案内されました。


家を尋ねると、壮年の夫婦が出てきて事情を説明しました。
 

 

「おばぁちゃん! またお酒飲んだの!?」
 

 

おばぁちゃんは叱られてしまいました。

 


どうやら大正生まれのアル中だったようです。

 

ショボンとするおばぁちゃん。

 


ポカンと見ている大学生。


「ありがとうございました、大学生? 良かったらここに大学名とお名前と住所書いてもらえませんか?」


「そんな! 名乗る程の者じゃ!」


と言いながらサラサラと名前と住所を書きました。
 

 

丁重にお礼を言われ、僕はその場を後にしました。
 

 

授業には遅刻しました。
 

 

しかし、いやらしい僕は大学側に表彰されたり、おばぁちゃんが財産を僕に相続したいと言いだしたりなどの、善行から一気に邪悪な妄想を広げてました。

 

それから約11年。


今だになーんのっ連絡も入りません。

 


見返りを求めていないと言ったら嘘になります。

 


けど、お礼にお饅頭か単位ぐらいくれてもいいと思いました。



僕が助けた事によって、ほんの少し生き延びただけで、運命ってあんまり変わらないのかな。