僕は重い気持ちで高校2年のある時期を過ごしてました。



理由は


(体育、ソフトボール始まっちゃった…)


 
僕は、運動音痴というか、自分の★ん玉よりデカイ玉のスポーツができないんです。



目ん玉だよ。



サッカー、バスケ、ボーリングはもちろん、野球やビリヤードもやる気の無いプレイの挙げ句、みんなのテンションを下げる自信があります。


 
単身競技や水泳などは無難にこなせますが、その時期の体育はソフトボールでした。



興奮してはしゃぐ男子達。



1人、目の下に無数の縦線が伸び、テンションの低い俺。



(体育、野球じゃなくてダーツにしろよ……)



とか思ってました。
 


とうとう授業は始まりました。



しかし、更に問題発生。



学校側の体育用具を使うのですが、長年先輩達が愛用している為バイオハザードな香り。



そんなに潔癖症でもない僕でも、体育後は気合いを入れた手洗いを行なう程でした。


(体育つまんねぇし、グローブ臭ぇし……マジやだ……)


 
僕はせめて自分のグローブが欲しかった。



マイグローブを持っている人は、授業で使っても良かったのです。


 
その日も家でそんな事を考えながら、深夜に駅まで歩いてました。



すると、ロータリーにある物が落ちてる事に気付きました。



(ミズノ……?)


グローブです!



グローブが落ちていたのです!



僕は興奮して辺りを見回しました、誰もいません。



ナントカケンジという名前が書いてありましたが関係ありません。



路上の物は俺の物。



君の心は誰のもの?



(このグローブはきっとお☆様からの贈り物だ!)



僕は星に愛された男。



臭くない!



サイズもぴったり!



今この瞬間から僕はケンジくん。



まさに奇跡が起きたのです。


 
僕が上機嫌でグローブをはめると向こうから仕事上がりのキャバ嬢の集団。



(よし!  このテンションでナンパだ!)



無謀な17歳。



僕の度胸は界王拳(2倍)


「すみませぇん」という感じで声をかけたら、1人のキャバ嬢が気付きました。



「君、そのグローブで夢掴むの?」


 
僕は待ってました!と言わんばかりに



「いいえ! 星を掴むんです!」


キャバ嬢大爆笑。


笑いは取れましたが、後日の授業でボールは取れませんでした。