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【アプロプリエーションって?】

 

高校生の皆さんと語った数年間のガイダンスの中で、必ず出る話題が「パクリってどこからパクリですか?」という質問です。

僕個人は、B型あまのじゃくで、既存の作品から影響は受けることはあっても、当然ですが、それらと似たような作品を作ることは極力避けてきました。

ですが、WEB連載中に過去二回くらい、無意識のうちに他の作品と類似性を持つ演出をしてしまったことがあります。

その際は、当時の編集さんに「気にしなくていい」と言われましたが、個人的なこだわりから修正しています。

他の作品の影響を受ける言葉はたくさんあります。

盗作、パロディ、オマージュ、インスパイア、最近ではNYの絵画アーティストが日本のマンガ作品を模写したような作品を売ったという話題もありました。

その際に問題のアーティストは「アプロプリエーション」という言葉を使います。

これは僕も初めて聞きましたが、「有名な他人の作品を、自分の作品に流用・取り込んで表現する」という表現手法だそうです。

ただし、今回の事件においてはあまりにも露骨な模写で、その作品を売っている悪質性などから、問題視されています。

ですが、「自分の作品が、他の作品と似てしまっているのではないか」という懸念は、表現者だったら誰もが通る気持ちです。

【インスパイアとオマージュ】

例えば、拙著の奴隷区という作品においてSCM(スレイブコントロールメソッド)という奴隷を作れる器具が出てきます。

作品がどんなに酷評されても、このアイデアはいつも褒められました。

実はこれ、「ドラえもんが絶対に出さないであろう秘密道具って何だろう?」と考えたときに浮かんだアイデアでした。(似たアイテムあるかもしれないけど、知らないのよ。)

ちなみに、WEB小説版にはドラえもんを思わせるトークを入れています。

「ドラえもんが出さないアイテムとは?」はインスパイア(閃きや刺激を与えられること)で、

「ドラえもんを思わせるトーク」を作品に盛り込んだのは、オマージュ(尊敬する作品から影響を受けた)に片足くらい入っていると思います。

とはいえ、純粋な気持ちで考えれば考えるほど、この議題はアーティストやクリエイターといった表現者にとって難しいお話です。

一方で、これを敏感に気にしていたら、西遊記からドラゴンボールは生まれなかったし、アンパンマンからワンパンマンも、家政婦はみたから家政婦のミタなんかも生まれませんでした。

どんな売れている作品も、むしろ売れていれば売れているほど、核となる「モチーフ」や神話性って必ず存在します。

うるさく言うと、そのモチーフも、盗用じゃないか、と思う人も、世の中にはいるかもしれません。

ですが、他作品からの影響の連続によって、音楽、文学、マンガ、映像といった分野で、歴史が彩られ、新しいエンタメ作品が生まれているのも事実です。

そこで気になる本質が、「線引き」です。

どこからどこまでが「盗作」で、どこからどこまでが「モチーフやインスパイアやオマージュ」なのか、という部分です。

【カンニングと研究の違い】

そこで、個人的な答えですが、「方程式はパクって良い」ということです。

これは僕も過去ネットの記事で見かけたクリエイターの心得を、自分なりにかみ砕いたものです。

例えると、1+1=2の、「2」という答えを他人から見聞きしてそのまま写して答え、報酬をもらえばそれはカンニングであり盗用ですが、

「どうして2になるんだろう?」という、「方程式の部分を研究」して、3-1=2といった独自の式を作ることはOKということです。

これが勉強であり、この発想は物語においても、「この作品を読んだカタルシスを、自分の作品で表現してみたい」と考えることは、異議を唱える人は少ないと思います。

イラストにおいても、憧れのイラストレーターの絵柄を真似することから始める人は多いと思います。

ちなみに僕は、大学生まで漫画家になりたくて、中高生までは田島昭宇先生と青山剛昌先生、それに藤田和日郎先生、金子一馬先生に、大学生のときはイラストレーターのペーター佐藤先生の絵をよく真似して描いてました。

要するに、カンニングはパクリだけど、模写して方程式を解明するのは勉強だと、僕は考えています。

【まとめ】

 

大事なのは、他の作品を研究・勉強することと、それをした「自分自身の経験値」です。

 

そこからオリジナリティが生まれます。

もちろん、上記はあくまで応急的な線路であり、作品を世に送るなど、実際に汽車を走らせる際は、注意しながらの運転が必要です。

僕も失敗するし、逆に、WEBで作品を表現していると、自分の文章や作品をそのまま転用されたり、似た形で表現されたことも多々ありました。

ですが、個人的には、「俺も有名になったなあ」とか「いや、有名過ぎず、ちょうどいいポジションだったからパクリやすいのかな」「いやでもそれなりに印象に残ったからパクってくれたのか」など、いろいろ悩みましたが、結果ありがたいことだと思っています。

要はお金の絡みや、著者と読者の不快感だけまずは気を付けて、情熱があるのなら、人の目を気にせず、存分に表現しても良いと僕は思います。

それが業界の発展にも繋がると思います。

WEB上なら、嫌でも指摘が来るので、その積み重ねで、やって良いことと悪いことが分かってくると思います。

そういった側面からも、多くの一流の作品を見て、経験していくことが、表現者として大事な要素です。

以上。
 

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(オオイシヒロト作画 comico版カラー奴隷区)

そして、4つ目の良い質問だと思ったお話もしようと思いましたが、長くなってしまったので次回にします。

延長4番目は【④自分が表現したいことと、人に求められることは、どちらがいいか?】という表現者の命題についてです。

お楽しみに。

ご意見・ご感想。どうぞお気軽に、お待ちしています。