つづき
怪奇現象が続くある日のこと。
庭で猫が出産していました。
僕はどうしても子猫が欲しくなり、一匹の子猫を親猫から盗みました。
嫌がる子猫を無理やり連れていき、僕は元カノの名前「アサミ」と名づけました。
めちゃくちゃ引っ掻かれました。そういう所までそっくり。
しかし、嫌がる子猫を見て僕は我に帰りました。
親から引き離された子猫です。僕はなんてひどい事をしてしまったんだろうとだんだん後悔し、反省して、すぐに庭に逃がしました。
でもやっぱり祟り-TATARI-が起こりました。
それから夜の11時になると、毎晩決まってその子猫が家の前にやって来るのです。そして、
「ニャァァァ………ニヤアァ…………」
と悲しい鳴き声で鳴くのです。
風が強い日も、雪の日も。
その子猫は黒猫でした。
それからも、前にも増して怪奇現象が続いたのです。
きっとその黒猫が、
「霊の皆さーん、ここに罰当たりにゃ酒臭いクソガキがいるニャー、やっちゃってくださいニャー」
とか言ってたんですニャー。
結局ジャスト一年間、金縛りは日常茶飯事で、
家の目の前にある5体のお地蔵さんが、同じ位置から見てるのに昼と夜とで微妙に移動していたり、
誰もいない部屋で、突然本棚から本が落ちたり、霊感が強い友人が僕の部屋を恐がったり、泡盛りと大五郎(日本酒)で5人がゲロ吐いたり。
散々な一年を過ごしました。ちなみに身体的な異常はまったく無く、恐い思いをしても僕の体と心は健康そのもので、毎日お酒飲んでました。むしろアル中でした。
そんなある日、ちょっと狙っていた女の子が家に遊びに来ました。
僕はその子に興味がありましたが、その子は年上なのもあってか、あまり異性として見てもらえません。
夜になり、その子は帰ると言いだしました。
帰りたい女性。
帰したくない俺。
考えました。
(ここで帰したらこの子と何もできない、しかし帰りたがる女の子を無理やり引き留めるのはよくない。さぁ、どうする? どうする俺!)
「…………家の目の前にお寺と地蔵あるじゃん? 実はさぁ……」
僕は突然例の恐怖体験を話し始めました。
恐がる女性。
喜ぶ俺。
結局その子は恐がって帰れなくなりました。
そう、突然恐い話をして、彼女を帰さない作戦です。
すべては計算だったのです! キラの正体はライトで、コナンの正体は新一だったんです!
もちろん、今までの恐怖体験はすべて実話です。
そして一晩をともにはしたものの、その子とは一切何もありませんでした。フッツーに帰りました。
本当に好きだったから。
本当はキッパリ拒否されたから。